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留学後半年間の振返りと2017年の目標

 留学から帰国し、希望していた部署に配属され、それ以来、目の前の仕事にどっぷりと漬かってきました。精神的・肉体的にしんどいことも多く、心が折れそうになったこともありましたが、周りのメンバーに支えられながら、11月には、チームで目標としてきたプロジェクトを成し遂げることができました。最近は、そのプロジェクトも終わり少し余裕も出てきたため、これまでの半年の自分の仕事ぶりを振り返り、もう一段階高いレベルで日々の仕事をしていくために何が必要かを考えるようになりました。そこで、今の自分に何が足りないか、それを克服するために2017年をどのように過ごしていくべきかを、以下に書き記しておきたいと思います。

1.会計等の経営リテラシーの習得

 今の仕事では、日々の業務の中で、企業の役員レベルの方とお話する機会が多いです。具体的には、企業の向かうべき方向性や、プロジェクトの資金繰りの相談など。彼らと対等なレベルで議論をするために、会計・ファイナンスをはじめとした経営リテラシーが圧倒的に足りていないと感じています。留学中は、国際関係論やソフトスキルを主に学んでいたので、全く違った分野の学びが必要だと感じています。端的に言うと、MBAで学ぶような知見が、今の業務では求められています。具体的には、以下の3つを意識して学んでいきたいです。
(1)財務会計。損益計算書や貸借対照表を読んで分析することに加え、減損などの会計上の処理方法についてよく理解しておく必要があります。手始めに、簿記2級を来年2月に取得したいと思います。
(2)ファイナンス。プロジェクトファイナンスやコーポレートファイナンスの知識が必要です。企業の資金調達の方法、エクイティとデットをどう組み合わせるかなど。来年4月23日に証券アナリストの一次試験を取得したいと考えています。
(3)組織改革・事業再生。今の仕事では、監督している団体の業務運営をどう改善していくかを考えなくてはなりません。そのために、経営者や経営コンサルタント、事業再生(ターンアラウンド)専門家の書いた本を読んで経営・組織改革の疑似体験を積みたいと考えています。最近読んでヒットしたのは、三枝匡さんのV字回復の経営。実際に経営の現場でもがき苦しみながら、物事を一つずつ動かしていった人の文章は、心が揺さぶられるものが多いです。

2.日本語の技術
 留学中の2年間はひたすら英語の表現力を磨いてきましたが、帰国してからは、正しい日本語の使い方を常に意識するようになりました。仕事柄、少しの日本語の表現のミスが、多くの人に誤解を与え、社会に致命的な影響を与えかねないことを痛感しています。また、忙しいキーパーソンに対し、短く意味の凝縮された日本語で、メッセージを伝える技術を学ぶ必要があると考えています。(今になって、留学中の自分のブログを読み返すと、冗長だなと感じる部分も多いです。。)
 こうした日本語の技術を向上させるには、人に物事を伝えることを生業としている人の著書を読むことが必要なのかと思います。今年読んだ本では、本多勝一さんの日本語の作文技術という本が、今まで何となく書いていた日本語の文章の書き方の原則を学ぶ上で、非常に役立ちました。

3.人・組織を動かす力

 これは、留学中から持っていた問題意識と共通します。所属する組織では役職が一つ上がり、資料作成をするのみならず、自分がフロントに立って説明する機会が多くなりました。そのため、上司や他部署のキーパーソン、日本企業や監督している団体の人たちにどう分かりやすく説明し納得してもらうかに、日々失敗をしながら取り組んでいます。
 留学中に学んだ、論理だけでなく感情に働きかける、自分のストーリーを伝えるなどのコンセプトを、日本の保守的な組織・文化に応用することに日々苦戦しています。また、自分のように若い人材が、自分より組織での経験が長い人や、その分野での専門知識の豊富な人たちに納得してもらい、動いてもらうにはどうしたらよいかも日々考えています。まだ解はありませんが、その課題に対して他の誰よりも徹底的に考え抜くこと数字やデータなど客観的な事実を押さえることパッションを持って人に伝えることなどが必要なのではないかと仮説を立てているところです。これも、日々の業務の中で試行錯誤していきたいと思っています。

4.異分野との積極的な接触

 所属する組織で役職が一つ上がったこともあり、上からの指示に従って作業を正確・迅速にこなすだけでなく、自ら課題を設定し企画を作っていくことが求められるようになりました。思考する範囲が自分の所属する部や課の情報にとどまると、新しい発想が得られず、ユニークな企画を立案できないことを痛感しています。新たな企画の立案には、様々な会社や専門家の人たちとの意見交換や、自分がハブとなって異分野の人たちをつないでいくことが極めて重要だと感じています。
 今いる部のトップは非常に尊敬できる人ですが、彼は、極めて多忙な若手の時代から、毎日必ず19時前には職場を出て、様々な分野の人たちと会食・交流するという生活を続けてきたそうです。仕事量が多いことに変わりはないので、朝は早く来て仕事を早く終わらせる工夫をしてきたそうです。そうした様々な人たちとの率直な意見交換を通じて、新たな発想を得たり、必要な人的ネットワークを構築してきたと言っていました。
 私自身は、この半年は、与えられた業務をこなすのに必死で、社内の同僚や社外の人たちの交流をする余裕が全くありませんでした。それにより、留学中に折角広がった視野が、急激に狭くなったのを反省しています。この反省も活かして、来年は、朝から夜遅くまで会社にダラダラといるのではなく、生産性を高め、仕事を可能な限り早く切り上げ、社内の全く別の分野にいる同僚や、社外の人たちとの交流を積極的にしていきたいと思います。

2年間の学びの総括③〜ソフトスキルについて〜

 ケネディスクールでの二年間の研究の柱の三つ目は、ソフトスキルでした。留学の直前に国際交渉の業務に携わった中で、日本が国際交渉の舞台で必ずしもリーダーシップを発揮できていないのではないかという危機感を感じました。また、個人レベルでも、国際会議に日本から一人だけ参加するという経験を何回かさせてもらう中で、欧米主導で議論が進む中萎縮してしまい、議論に全く貢献できないという不甲斐ない経験をしました。こうした経験から、国際社会の中で堂々と議論し、多様なバックグラウンドの人達を動かすリーダーシップ・交渉力・パブリックスピーチといったソフトスキルについての研究を深めたいと考えていました。二年間を通じ、以下の7科目を受講しました。

● 交渉の行動科学(Behavioral Science of Negotiation)
● リーダーシップシステム(The Leadership System: Leaders, Followers, Context)
● コミュニケーションの技法(Arts of Communications)
● リーダーシップの行使(Exercising Leadership: The Politics of Change)
● パブリック・ナラティブ(Public Narrative : Self, Us, Now)
● 気付く力(Noticing : A Leadership Challenge)
● 成人の発達(Adult Development)※ハーバード教育大学院の授業

 こうしたソフトスキルは、人生を通じて少しずつ高めていくものだと考えていますが、ここでは、ケネディスクールで得られた3つの視点について書いておきたいと思います。

1.周囲を活かすリーダーシップ
 適応型リーダーシップの授業で得られた学びについては、過去にいくつか記事(主な概念の説明最終授業)を書いているので、以下には、簡単に記したいと思います。リーダーシップに関しては様々な理論がありますが、ケネディスクールが最も押し出している適応型リーダーシップ(Adaptive Leadership)の特徴は、精神医学・発達心理学をバックボーンとしていることです。授業は非常に特徴的で、大教室での議論に教授は参加せず、学生に全てが委ねられる中で、どういった学生が次第に影響力を発揮していくか等のグループダイナミクスを観察・分析しました。適応型リーダーシップでは、リーダーシップの発揮(Exercising Leadership)を、構成員に真の課題に気付かせ、その課題の解決に向け構成員が主体的に行動するような環境を整えることと捉えます。この授業を通じて、効果的にリーダーシップを発揮するためには、システムの中で表面化されない隠れた見解(Hidden Perspective)を浮かび上がらせることが重要であり、そのためにも構成員が安心して発言をできるような環境(Holding Environment)を提供することが重要である等の学びが得られました。

 行動経済学・心理学について学ぶ気付く力の授業では、違った観点から、同様のコンセプトを学びました。つまり、リーダーの持つ、自分の都合の良いように物事を解釈する傾向(Self-Serving Bias)や、既に目の前にある情報に過度に依存してしまう傾向が、意思決定の重大な失敗や、未然に防ぐことができたであろう事故(Predictable Surprise)を引き起こしてしまうということです。例えば、マックス・ベイザーマン教授は、アメリカNASAのチャレンジャー号の爆発事故は、現場の技術者が爆発の可能性について懸念の声を上げるのを聞き入れず、新しい情報・データを積極的に求めなかったマネジメントの失敗・組織文化の欠陥に起因すると説明しました。この授業で得られた学びは、重要な意思決定を行う際には、自分の物事の捉え方にはバイアスがかかっていることを自覚した上で、他者の意見を積極的に求めていく、目の前にない情報を集めるために積極的に質問することが必要不可欠だということです。

 これらの学びは、年上の人達や権威を尊重する日本の文化には馴染みにくい部分もありますが、リーダーシップを発揮する人の心掛け次第で、少しずつ変えていけるのではないかと思っています。私自身、今後のキャリアでリーダーシップを発揮する機会を得た際には、まずは周囲の人たちに課題に気付いてもらい当事者意識を持ってもらう、彼らが安心して発言できるような環境を作る、自分自身のバイアスを訂正するために積極的に周囲の意見を求めていくということを心掛けていきたいと考えています。

2.感情・共感を意識したスピーチ
 コミュニケーションについては、主にコミュニケーションの技法パブリック・ナラティブの授業を通じて、学びが得られました。具体的には、組織・周囲の人達を効果的に動員するためのスピーチの手法について研究しました。これについても、過去に記事(コミュニケーションの技法の授業良いプレゼンの例)を書きました。授業中に実際にスピーチを行い、教授や受講学生からフィードバックを受けることにより、論理だけでなく相手の感情に訴えることの重要性や、自分のパーソナルな物語(Story)や聴衆との共通体験を語ることで、聴衆との間に共感を生むスピーチの手法について、理解を深めることができました。

 事例を見た方が理解が進むと思うので、ここでは、パブリック・ナラティブの授業で紹介されたスピーチのうち、最も印象に残ったものを紹介したいと思います。それは、1968年に、ジョン・F・ケネディの弟のロバート・ケネディが、黒人の解放運動を進めてきたキング牧師が暗殺されたその日に行ったスピーチスピーチのスクリプト)です。キング牧師の死を公に伝えたのはロバート・ケネディが初めてであったため、聴衆が精神的にショックを受け、暴動を起こすことも懸念されていました。キング牧師を暗殺したのは白人でした。そのため、特に黒人の聴衆は、裕福な家庭に育った白人であるロバート・ケネディに対して心理的な反発を覚えたはずです。にも関わらず、このスピーチが歴史上最も優れたスピーチの一つとして讃えられ、聴衆との間に共感を生むことができたのは、ロバート・ケネディが自身の兄が暗殺された体験に触れた以下の部分があったからこそだと思います。
 

For those of you who are black and are tempted to fill with -- be filled with hatred and mistrust of the injustice of such an act, against all white people, I would only say that I can also feel in my own heart the same kind of feeling. I had a member of my family killed, but he was killed by a white man.


 聴衆との共通体験(このスピーチの場合、大事な人が殺害された深い悲しみ)を語り、共感を生んだ上で、ロバート・ケネディは、他者への愛、慈悲といったアメリカが大切にすべき価値について訴えかけます

 What we need in the United States is not division; what we need in the United States is not hatred; what we need in the United States is not violence and lawlessness, but is love, and wisdom, and compassion toward one another, and a feeling of justice toward those who still suffer within our country, whether they be white or whether they be black.


 ロバート・ケネディは、このスピーチの前まで、兄の死について公の場で一度も話したことがなかったそうです。このスピーチは、聴衆の感情に寄り添い、自分の辛いパーソナルな経験を語ることで聴衆との間に共感を生み、大切にすべき価値を訴えるスピーチの最も優れた事例の一つだと思います。

ロバート・ケネディのスピーチの動画

3.リーダーシップの基礎となる発達心理学
 適応型リーダーシップの理論的なバックボーンになっているロバート・キーガン教授の発達心理学の理論を、Adult Developmentの授業を通じて学びました。これについても、過去にいくつか関連の記事(授業の学びイチロー選手の例)を書いたので、以下には、発達心理学が今後の自分の人生にどう応用できるかについて学んだことを、簡単に記したいと思います。

 まずは、人は成人になってからも、精神的に成長をし続けられるという点です。キーガンの理論では、人間としての質的な成長・精神的な成長は、今までには自分に見えていなかったものを、一歩引いて観察できる対象としていくプロセスを積み続けることによって得られると考えます。Adult Developmentの授業では、自身の隠れたコミットメントや固定観念を明らかにするため、免疫マップと呼ばれるマップを作成しました。私にとってこのマップの作成は非常に役に立ち、自分がいかに他者の視線を気にしているか(人から嫌われたくない、グループから阻害されたくない)が分かり、そのことがいかに「はっきりとNOということを含め、勇敢なコミュニケーターになる」という自分の改善目標を阻害しているかが分かりました。これは一例ですが、今後の人生において精神的に成長し続けていくためには、自身の行動を客観的に振返り、言語化する作業を通じ、今までに自分に見えていなかったものを観察対象にしていくプロセスが重要だと気付くことができました。

 次に、仕事だけでない人生のあらゆる側面が、人の精神的な成長に寄与するということです。この授業を取るまでは、仕事における成長は仕事においてのみ役立ち、プライベートとは関係がないというように、仕事とプライベートは全く別のものであるという単調な世界観を持っていました。しかし、キーガンの発達心理学では、仕事、パートナーとの関係構築、子育て、地域コミュニティとの交流等の人生のあらゆる側面における要求・チャレンジが、人の精神的な成長を促すという、より統合的な物事の見方を得ることができました。私自身のこれまでの人生は、かなり仕事に偏った生き方をしてきました。今後は、自分の人生に降り掛かるあらゆるチャレンジが自分の精神的な成長を促すという意識を持って、バランスの良い人生を送っていきたいと思いました。

 なお、加藤洋平さんの「組織も人も変わることができる!なぜ部下とうまくいかないのか」という本は、キーガン教授の発達心理学の理論を平易な言葉で説明し、職場にどう応用するかを解説している本です。この分野の概観を掴む上で非常に良い本だと思うので、関心のある方はお読みいただくといいかもしれません。

2年間の学びの総括②〜国際政治・経済について〜

 ケネディスクールでの二年間の研究の柱の二つ目は、国際政治・経済でした。そもそもの問題意識として、私が社会人になってから、日本のGDPが中国のGDPに抜かれたり、日中関係の悪化に伴い中国がレアアースの輸出を制限する事態が発生したことから、中国の台頭をはじめとする国際情勢の大きな変化の中で、日本はどのような方向性を目指していくべきかを学びたいと思っていました。また、日本の大学院では、経営学や企業戦略論、技術ロードマッピング等、MBAの内容に近い科目を重点的に学んでいました。そのため、ケネディスクールでは、企業の戦略やコーポレートファイナンス、起業論といったミクロな観点の科目ではなく、貿易や国際金融、国際関係論等、国と国はどのように相互依存しているのか、そもそも世界はどのような方向に動いていくのかというマクロな観点を得られるような科目を重点的に取りました。二年間を通じ、以下の8科目を受講しました。

● 貿易の政治経済学(The Political Economy of Trade)
● アメリカの官民関係(Business-Government Relationship in the United States)
● 民主主義の理論(Democracy Theory)
● 大国間の競争(Great Power Competition in the International System)
● グローバリゼーションの未来(The Future of Globalization)
● 発展するアジア大洋州におけるアメリカの利益の交渉(Negotiating U.S. Interests in an Evolving Asia Pacific)
● 競争力の政策(Policies for Competitiveness)
● 国際金融政策の経済学(The Economics of International Financial Policy)

 そもそも世界はどのような方向に動いていくのか、その中で日本はどのような方向性を目指していくかというのは非常に大きな問いで、自分の中でも明確な答えが出たわけではなく、卒業後も学び続け、アップデートしていく必要があると思っています。ただ、ケネディスクールで得られた3つの視点について、以下に整理しておきたいと思います。

1.国家のパワー
 これについては、過去の記事「Great Power Competitionの授業から学んだこと」に詳しく述べたので、ここでは簡単に書いておきます。ニコラス・バーンズ教授の定義によれば、国家のパワーは経済力、政治力、軍事力、ソフトパワーの4つから構成されます。バーンズ教授は、その4つのパワーの中でも、経済力が、その他3つを維持する上での基盤となるものであり、アメリカが大国の地位を維持できているのはその強い経済力があるからに他ならないと主張していました。日本という国が今後も国際社会の中でパワーを維持していくという前提に立つのであれば、憲法の制約があり、軍事力を強くすることに限りのある日本は、経済力を基軸に国作りを引き続きしていく必要があると感じるようになりました。そもそも日本が国際社会の中でパワーを維持する必要はないのではないか、人口減少を迎える日本は経済力の増大・量的な発展を追究するべきでなく、例えばスウェーデンのような持続可能性に重点を置いた国家や、シンガポールのような国家を目指すべきではないかという意見も聞きます。これに対して、私自身の今の考えは、中国やロシアの近年の動きに見られるような大国が領土・領海の拡大を追求していく動きや、アメリカが世界の問題に介入することを控える孤立主義(Isolationism)の動きを強めており、アメリカが今後も東アジアの安全保障に積極的に関与するかどうかが不透明なこと等から、日本は自国を守り、他国と対等以上に関係を構築できるだけのパワーを維持し続ける必要があるのではないかと思っています。

2.グローバリゼーションにおける、政府というプレイヤーの役割
 グローバリゼーションの未来(Future of Globalization)という授業では、国際問題において、政府のみでなく、民間セクター・非営利セクターといった多様な主体がメインプレイヤーに躍り出ていることを学びました。例えば、サイバーセキュリティの問題では、ある国のハッカー集団が他国の政府の機密情報を盗む等、民間セクターの存在感が非常に大きくなっており、従来の国際的な枠組み、例えば国連やNATO等の政府間の国際協定では、十分に対応ができなくなっています。ISIS等のテロリズムも、従来の戦争とは異なり、政府以外のプレイヤーがテロリズムを仕掛ける主体者です。他にも、エボラ問題に代表される国際保健の分野では、ゲイツ財団やクリントン財団等の非営利セクターが重要な役割を果たしていて、WHOをはじめとする国際機関や各国政府が十分に機能を果たせていないことも学びました。このように、国際問題において、政府が独占的に役割を果たすのではなく、民間セクター・非営利セクターが主要なプレイヤーとして存在感を高めています

 その中で、政府はどのような役割を果たしていくべきでしょうか。一つは、民間セクターがグローバルな市場の中で公平に競争できるようなルール作りです。貿易の政治経済学の授業では、民間セクターが他国市場で不当な扱いを受け、それを改善するために政府対政府で解決を目指すケースを学びました。例えば、EUが、消費者の保護を理由に、アメリカのホルモンを用いて飼育された牛肉の輸入を禁止したことに対し、アメリカはWTOの紛争解決手続き(WTO Dispute Settlement Mechanism)に則り、解決を図ろうとしました。また、新たなトレンドとして、従来は貿易協定に含まれていなかった為替政策等の要素を、貿易協定に盛り込もうという動きがあることも学びました。TPPにおいても、法的拘束力はないものの、行き過ぎた通貨の切下げ競争を避ける、定期的なマクロ経済問題について話す場を設けるという内容の共同宣言が発出されています(アメリカ財務省のサイト)。日本においても、民間セクターがグローバルな市場で行動することがますます増える中、WTOやTPP等の貿易協定、G7やG20等の政府間の枠組みを活用して、新興国等におけるマクロ経済政策・制度の改善を求めていく政府の役割は、引き続き重要になってくると感じました。

 もう一つは、安定的なマクロ経済の運営です。国際金融政策の経済学の授業では、変動相場制か固定相場制のどちらを取るかといった為替レジーム、国の資本流入・流出をどれだけ開放するか、金利やインフレに影響の与える金融政策の舵取りをどうするかといったマクロ経済の運営が、民間セクターの行動や国の経済的アウトプットに与える影響の大きさを学びました。例えば、ラテンアメリカ諸国は、1980年代を中心に、マクロ経済の運営の失敗が理由で対外債務の返済ができずデフォルトに陥り、そのデフォルトの歴史があることが現在も尾を引いて、未だに国が市場から借りられる金利(sovereign spread)に影響を与えていることを学びました。また、中国が現在資本の流出、通貨の切り下げ圧力にさらされている理由の一つに、アメリカFRBの金融政策によるアメリカの金利の高まりがあるというように、一国の経済は他国のマクロ経済政策にも大きく依存していることも学びました。政府の役割として今後も残るものに、他国の政府のマクロ経済政策の動向を見ながら、時にそれと協調しつつ、安定的なマクロ経済の運営をしていくことが挙げられ、それは民間セクターの利益拡大の基盤になるものです。

3.民主主義
 民主主義の理論の授業を通じて、アリストテレスやルソー、ロック等のアメリカの民主主義の思想に影響を与えた古典を読んだ他、2年間ケネディスクールに身を置き、様々な同級生と交流する中で、これまで考えることの少なかった民主主義のあり方について考えるようになりました。アルゼンチン人の同級生で、世界に広がるカトリック教徒の間のネットワークを活用し、気候変動問題の重要性について主張(Advocacy)する団体を率いている友人がいます。彼は、元々グーグルで働いていましたが、そのキャリアを投げ打って、現在の市民活動家としての活動に注力しています。彼はパリで開かれたCOP21にも参加し、オランド仏大統領と面会して気候変動対策の重要性を訴える等、活動の範囲を積極的に広げています。彼は、他にも、ハーバード大学の基金による石油や石炭等の化石燃料への投資を止めるべきという、Divest Harvardという活動にも関与しています(http://divestharvard.com/)。彼のように、大企業での安定したキャリアを捨て、市民活動家という立場から政府の政策を変えていくという生き方があることに驚きました。

 他の例で言えば、ゲイの人権に関する動きが挙げられます。私がケネディスクールに来て一番驚いたことの一つに、同級生の中における性的少数者(LGBT)の割合が極めて多いこと、彼らが積極的に性的少数者の権利拡大に向けて活動していることでした。そして、2015年6月に、同性婚は合憲であるとの判決が最高裁により出され、ケネディスクールは、それを地道な市民活動の成果だとして礼賛しました。これらの例は数ある事例の一部に過ぎないのですが、アメリカでは、一市民が同じ想いを持った仲間達とつながり、声を上げていくことで、政府の政策や、企業の行動を大きく変えていくことができるという信念が貫かれているように感じます。日本では、市民活動家というと、ラディカルな思想を持った人達が多いようなネガティブなイメージも含まれるかもしれません。私自身もそのようなイメージを持っていました。しかし、市民活動家やNGOの活動が活発化することは、彼らと政府・企業の間に良い意味での緊張関係を生み、優れた政府の政策や企業の行動につながっていくのではないかと思いました。日本では、原子力発電所を初めとするエネルギー問題に関するデモや、直近では保育園に関する環境整備を求める市民の動きが活発化しています。そのやり方には工夫が必要かもしれませんが、このような市民自らが声を上げていく動き、NGOの活動の活性化は、日本にもっと求められるものだと感じました。

2年間の学びの総括①〜エネルギー政策について〜

 ケネディスクールでの二年間の研究の柱の一つは、エネルギー政策でした。社会人になってから東日本大震災とそれに伴う原発の停止、社会的な混乱に直面した経験や、留学前のキャリアで、エネルギーと表裏一体の気候変動に関する業務に関わった経験から、日本は今後どのようなエネルギー政策を作っていくべきかに強い関心があったからです。二年間を通じて、以下の4科目を受講しました。

● エネルギー政策:技術・システム・市場(Energy Policy: Technologies, Systems, and Markets)
● エネルギーの地政学(Geopolitics of Energy)
● エネルギー政策分析(Energy Policy Analysis)
● 気候・エネルギー・メディアの対立(Controversies in Climate, Energy, and the Media)

これらの授業を通じて得られた学びは、大きく以下の3つに集約されます。

1.安全保障を加味した総合的なエネルギー政策の重要性
 エネルギーの地政学の授業を通じて、安全保障とエネルギー政策は密接に関連しているという視点を得ることができました。例えば、アメリカのシェール革命は、アメリカのエネルギー自給率を高め、アメリカの中東への軍事的関与の方針に影響を与え得るものです。石油の80%以上を中東に依存する日本は、こうしたアメリカの軍事政策に大きな影響を受けます。同様に、サウジアラビアとイラン間の国際関係は、OPECの意思決定の効率性に影響を与え、それは原油価格に直接的に影響を与えます。原油価格が変われば、それに伴い天然ガスの価格も変動し、原油・天然ガスの両方を海外からの輸入に依存する日本のエネルギーコストに大きな影響を与えます。他にも、日本は原油・天然ガスを海上輸送しており、中東からの輸入経路には、南シナ海やマラッカ海峡が含まれます。ひとたび南シナ海やマラッカ海峡の安全保障環境が不安定になれば、日本の安定的なエネルギー供給に影響が出ます。その観点から、中国のアジアにおける軍事政策を注視する必要があります。

 また、日本がどの国から重点的にエネルギーを輸入するかは、二国間の関係性にも影響を与えます。アメリカが今後原油・LNGを輸出するようになった場合に、仮に日本がアメリカからの輸入を増やせば、貿易関係の強化を通じ、日米関係にプラスの効果があります。しかし、安全保障面で既に大きくアメリカに依存している日本が、エネルギー面においてもアメリカに依存すべきかどうかは、総合的な日米関係を考慮した上で、判断が行われることが望ましいはずです。同様に、ロシアからの原油・LNGの輸入を増やせば、日露関係にプラスの効果があります。しかし、昨今のロシアのウクライナ等に対する強硬な外交政策を踏まえれば、日本がロシアからの輸入を増やすべきかどうかは、日露関係はもちろん、ロシアに対して強い批判をしているアメリカとの関係性も考慮する必要があります。

 このように、エネルギー政策と安全保障は切っても切り離せない関係にあり、日本を取り巻く安全保障環境を理解しながら、総合的なエネルギー政策を立案していく観点が必要不可欠だという学びを得ることができました。そのためには、経済的側面だけでなく、国際政治や安全保障等、複数の視点を統合的に判断できる人材が必要になってくると同時に、エネルギー政策や外交政策、防衛政策を担う関連機関の連携がますます重要になってくると感じました。

2.気候変動問題に貢献するエネルギー政策
 大国の競争(Great Power Competition)の授業では、シリア問題や南シナ海の問題等において、アメリカやロシア、中国等の大国間の立場が相容れず、協調することが極めて難しくなっていることを学びました。他方、気候変動については、アメリカと中国が野心的な共同宣言を発出し、2015年末にはパリ合意という歴史的な合意が結ばれました。気候変動は、多くの国際問題において立場を異にする世界の国々が、共に解決すべき重要な課題だと認識し、国際的な協調体制を構築できた、唯一の前向きな事例だと捉えられていました。

 ケネディスクールでは、COP21が2015年12月にあったこととも関連し、気候変動に関する様々なイベントが開催され、毎回満員になるほど多くの学生が参加し、気候変動に対する学生の高い関心が伺えました。気候・エネルギー・メディアの対立の授業では、教皇フランシス(Pope Francis)が、気候変動を政治的な問題ではなく、道徳的問題(Moral Issue)・世代間公平性(Intergenerational Issue)と定義し、多くのカトリック教徒の気候変動に対する考え方に影響を与えたことを学びました。こうしたことから、ケネディスクールはリベラルな思想の強い学校だということを差し引いても、気候変動問題は若い世代に極めて関心の強い問題であり、宗教的リーダーの積極的関与により、今後もますます多くの人達の関心を引いていく問題になると感じました。

 エネルギー政策分析の授業では、炭素の社会的費用(Social Cost of Carbon)という概念を学びました。これは、年月が経ち、大気中の炭素の量が蓄積されていくにつれ、大気中に排出される一単位あたりの炭素が地球に与えるネガティブな効果(※限界費用(marginal cost))がどんどん大きくなっていくという考え方です。別の表現で言えば、異常気象や海面上昇、農業生産の減少、食糧不足を引き起こす等の気候変動の負の効果は、長期的にどんどん深刻になっていくということです。通常、人々は、こうした長期的な負の効果を過小評価して考えてしまい(※割引率が高い)、今現在において、気候変動の対策を熱心に取る必要がないという考えに陥ってしまいます。エネルギー政策分析の授業で得られた学びの一つは、気候変動の脅威・CO2の社会的費用は長期的には非常に大きく、こうした長期的な外部性・社会的費用を、目の前の政策立案や企業行動に反映させていく必要があるということでした。

 ケネディスクールでの二年間を通じ、気候変動がいかに国際社会の中で重要な問題と捉えられているかを痛感し、日本が国際社会の中でプレゼンスを高めるためには、この問題に真摯に向き合い、積極的に貢献していく姿勢が必要不可欠だと感じました。特に、ケネディスクールで学んでいる主に30歳前後の若い世代の気候変動問題への極めて高い関心を考えれば、こうした若い世代が各国のリーダーになっていく頃には、気候変動問題への貢献の度合いの大小が、国がどれだけ深刻なグローバルイシューの解決に真剣に取組んでいるかを測る一つの指標になっているのではないかとすら感じました。また、気候変動と表裏一体のエネルギー政策を立案する観点からも、長期的な気候変動の脅威・CO2の社会的費用の大きさを十分に加味し、各エネルギーオプションの費用(Cost)と便益(Benefit)を比べていく必要があると感じました。

3.産業競争力に資するエネルギー政策の研究

 エネルギー政策分析の授業の中で、環境負荷の小さい自動車を推進する政策、具体的にはCAFE基準と呼ばれる自動車製造企業に課される燃費基準に関し、費用便益分析(Cost Benefit Analysis)を行いました。教授の説明した分析の中には、CO2やその他大気汚染物質の削減に伴う便益、消費者がガソリン代に使うお金を減らすことによる便益、追加的に必要な研究開発投資の費用等が盛り込まれていました。他方で、そうした規制が、企業の国際競争力に与える影響や、雇用に与える影響については、一切盛り込まれておらず、疑問に思った私は教授に質問をぶつけました。教授の回答は、エネルギーに関する規制が産業競争力・雇用に関する影響については、現在の費用便益分析に含まれることは難しく、今後更なる研究が必要な分野だとのことでした。

 貿易の政治経済学の授業では、ソリンドラ(Solyndra)というアメリカの太陽電池メーカーが、中国の安価な太陽電池に市場を席巻され、破産に陥ったケースを扱いました。ソリンドラは、オバマ大統領のグリーンニューディール政策の一環として補助金等の政策金融的な支援を受けていたため、国税の配分に関する代表的な失敗事例として取り上げられます。授業での焦点は、中国の政策支援はWTOルールにおけるダンピングに当たるのか、そもそもアメリカ政府に勝者(Winner)となる企業を選定する能力はあるのか、ということでした。しかし、太陽エネルギー産業の競争力に関し、アメリカの政策金融支援と中国の政策金融支援がどれだけ効果を発揮したのかを分析するという観点は、授業では扱いませんでした。

 こうした事例を見るにつけ、規制や政策金融を含むエネルギー政策が、産業の競争力に与える影響については、十分に研究されていないフロンティアの分野であると感じるようになりました。適切な省エネルギーに関する規制は、自動車や家電等の製品のエネルギー効率を高め、国際競争力を高める効果があると思います。同様に、エネルギーミックスの議論の中で、再生可能エネルギーの導入目標を定め、FIT(固定価格買取制度)等の政策を打つことは、太陽光や風力等に関する産業におけるイノベーションの促進に効果があるはずです。今後の自分の課題として、こうしたエネルギー政策と産業競争力の関係性について、研究を深めていきたいと思っています。

2年を経て、留学前の自分に伝えたいこと

 2年間の留学生活を振返り、授業、ジャパントレックやボーゲル塾等の課外活動、コースアシスタントを務めたこと、ボストン在住の日本人との交流等、概ね自分の満足のいく留学生活を送ることができました。他方で、もっとこうしておけばよかったなと後悔する点がいくつかあります。これから海外の大学院に留学する人や、現在留学中の人に向けて、僕の後悔が役に立つかもしれないので、以下に書いておきたいと思います。海外の大学院に留学する人にはそれぞれ優先事項があると思いますし、初めて留学する人にとっては、日々の授業を乗り切ることで精一杯だと思いますが、あくまで留学を終える一人の日本人の個人的な意見として、参考にしてもらえればと思います。

1.日本人としての存在感を高めるための努力
 元々の僕が留学しようと思ったのは、留学前に携わった国際交渉の業務の経験から、国際会議等の舞台における日本の存在感が小さくなっている状況を改善したい、一個人としても競争力を高めて、存在感を発揮していきたいという想いがきっかけでした。この初心を大事にして、ケネディスクールという100カ国から1,000人が集まる空間を、日本人としての存在感を発揮する場としてもっと意識的に活用すべきだったと感じています。入学時には、1,000人の学生が、互いに誰も知らない状態からよーいどんでスタートします。ところが、入学して二年が経ち、卒業が近づいてくると、学業・課外活動等の様々な活動に積極的に参加し多くの学生に知られる存在感のある学生と、「そんな人いたっけ?」という存在感の薄い学生とに、明確に分かれてきます。僕自身は、エネルギーの地政学の授業のコースアシスタントを務めたことや、二年連続でジャパントレックに関与した経験から、ある程度の存在感は出せたかもしれないと思いつつ、決して存在感が最も高い学生グループの一人ではありませんでした。

 残念ながら、ケネディスクールでの日本人の存在感は低いと言わざるを得ないと思います。人数は今年度10人でそもそも少ないですし、多くの日本人(特に日本育ちの日本人)は、授業中の発言は少なく、社交の場にも積極的に参加しないからです。別にそれでいいじゃないかという意見もあると思いますが、僕自身は、日本人としてこうした状況は悔しいです。また、その人が合格したのは、ある程度定められた「日本人枠」の中で選ばれたはずで、その人が合格しなければ、合格していた他の日本人がいたはずです。そうした合格しなかった人の分まで、日本人として積極的に学校に貢献していく姿勢が求められるのではないかと思います。

 勉強に集中するのはもちろん重要なことですが、どの職業に就こうと、周囲の人に、「この分野ならあいつに聞いてみよう。」と想起されないと、その勉強の成果も無駄になってしまうと思います。また、日頃から存在感を発揮していないと、国際社会の中で自分の意見を通すことも難しくなってしまうと思います。これから留学する人は、留学先の大学院を擬似的な国際社会だと仮定して、日本人としての存在感を発揮する努力をしてほしいと思います。

2.社交活動への積極的な参加

 上記1.に関連することですが、社交活動にもっと積極的に参加すればよかったと思います。僕も初めのうちは頑張ってパーティやクラスイベントに可能な限り参加するようにしていました。しかし、学業が忙しくなり、また、パーティに参加してもアメリカ人のネイティブの中に交じって高速の英会話についていけない状況が続くと、段々と足が遠のいてしまいました。社交活動に積極的に参加しているアメリカ人学生や、社交慣れしているヨーロッパ出身の学生は、互いに結束を強め、しだいに仲良しグループを形成するようになります。二年目の後半になってからそうした人間関係の輪に入ろうと思っても、既に彼らが仲良くなりすぎていて、中々輪に入りづらいのが実情です。すると、こうした仲良しグループが企画するイベントに参加しづらくなり、ますます足が遠のくという悪循環が起きてしまいます。

 僕自身は、途中から、一部の仲良くなりたい学生に絞って、アパートの共用ルームに招いてパーティを開いたりする等、「狭く深い」社交をするように切り替えました。僕にとって、こうした学生は、同じく英語が第二言語で苦労しているラテンアメリカからの学生等が多かったです。こうした「狭く深い」社交を通じて、信頼できる友人を作ることができましたが、他方で、卒業が近づき、MPA2のクラス等の集まりが増える中で、これまで一度も話したことのない学生がいたり、久しぶりすぎて何を話していいか分からない学生がいるのは、何だか寂しいなと感じました。

 社交慣れしているヨーロッパからの学生等を見ると、自分と異なるバックグラウンドの人と楽しく会話をする、初対面の相手とも共通の話題を見つけて会話する等、社交も一つのスキルだと強く感じるようになりました。これから留学する人は、社交活動も、実世界でネットワークを築く訓練だと思って、積極的に参加してほしいと思います。短い時間でも構わないので、パーティやイベントに顔を出してみることを続けるだけでも、社交の訓練になりますし、周囲の学生からの認知度も変わってくると思います。

3.困難な授業へのチャレンジ

 前回の記事でも書きましたが、ケネディスクールは単位を取って卒業をするだけなら、決して難しい学校ではありません。ただ、一年目は特に、初めての海外の大学院での勉強ということで、守りに入ってしまい、自分がある程度知っている分野の、簡単に単位が取れそうな授業を取ってしまったことも事実です(例えば、アメリカの官民関係やエネルギー政策などの授業)。しかし、二年間を振返って、最も学びが多かった授業は、自分がこれまで知らない分野に果敢に挑戦した授業です(例えば、Great Power CompetitionやNegotiatin US Interests in the Evolving Asia等の国際関係論の授業や、Public Narrative等のコミュニケーション系の授業)。本当は勉強したかったものの、ついていけるか不安がある授業に、もっと積極的に挑戦すればよかったなと後悔しています(例えば、宗教の授業やアメリカ政治の授業)。また、他学部の授業のクロスレジスター制度ももっと活用すればよかったと思っています。結局僕は二年間通じて、ハーバード教育大学院のAdult Developmentしかクロスレジスターしませんでした。ビジネススクールやロースクールにも関心の多い授業は多かったのですが、そもそも授業についていけるのか、完全にアウェイの授業でうまくやり切れるかという不安がありました。

 これから留学する人は、初めは授業についていけるかという不安もあると思うのですが、単位を取るだけなら案外何とかなるので、守りに入らず、自分が本当に取りたい授業や、全く未知の分野の授業に積極的に挑戦してほしいと思います。

4.英語力を高めるための努力
 留学する前までは、留学して授業に出ていれば、英語力は自然と劇的に伸びるのではないかと思っていました。僕自身、毎日のリーディングの課題を読んだり、コミュニケーション系の授業でプレゼンをしたり、授業中に発言しようと努力する中で、英語力(読解・スピーキング)の伸びをある程度感じることができました。他方で、英語の語彙力や表現力、リスニング力は、日本で留学に向けてTOEFL対策を集中的にしていた時の方が伸びていたのではないかと感じています。留学の二年目に入った時に、語彙力や表現力が思ったよりも伸びていないと気付いてからは、意識してAnkiというアプリケーションを使って、日々のリーディングや教授の説明で知らない語彙が出てきたら、それをAnkiに記入して覚えるという習慣をつけるようにしました。すると、徐々に語彙力・表現力が高まってきたと感じています。また、自分のリスニング力が大きく伸びていないと感じて以来、時間を見つけては、PBS等のニュースを活用して、シャドーウィング(スクリプトのある英文を、音声に合わせて読み上げる)をするようにしました。このような、授業以外にも英語を訓練する時間を意識的に設けるようになってから、少しずつ語彙力や表現力、リスニング力の伸びを感じるようになりました

 これから留学する人で、留学期間中に英語力をしっかりと伸ばしたいという方は、授業を受けること以外に、語彙力・表現力やリスニング力を高めるような時間を別途設けるようにしてほしいと思います。

卒業式まであと8日

 卒業式まであと8日となりました。卒業して日本での勤務に戻ると、じっくりと留学生活を振返る時間も取れなくなるので、卒業式まで、毎日ブログを更新したいと思います。今のところ、以下に挙げたようなトピックで記事を書きたいと考えています。これからアメリカの大学院に留学する人や今留学中の人にも役立つようなコンテンツにできればと思っています。もし、こういうコンテンツを書いてほしいという方がいましたら、コメント欄に残していただけると幸いです。

・2年間の学びの総括①〜エネルギー政策について〜
・2年間の学びの総括②〜国際政治・経済について〜
・2年間の学びの総括③〜ソフトスキルについて〜
・2年を経て、留学前の自分に伝えたいこと
・ケネディスクールで学んだワークライフバランスのあり方について
・ケネディスクールの同級生の進路について

2016年春学期の成績&二年間の成績を振返って思うこと

 二年目の春学期の成績が公開されました。一月期に取った2つの授業と合わせて、成績は以下のとおりでした。(一年目の秋学期一年目の春学期、二年目の秋学期

 気付く力(Noticing: A Leadership Challenge) →A(0.5単位)
 競争力の政策(Policies for Competitiveness) →A-(0.5単位)
 気候、エネルギー、メディアの対立(Controversies in Climate, Energy, and the Media: Improving Public Communication) →A-(0.5単位)
 エネルギー政策分析(Energy Policy Analysis) →A-
 国際金融政策の経済学(The Economics of International Financial Policy) →A
 成人の発達(Adult Development) →A-


 ケネディスクールの定めている成績の基準は、以下のとおりです。
 
 A:10% →上位10%
 A-:20% →上から3分の1くらい
 B+:35% →真ん中
 B:25% →下から3分の1くらい
 B-以下:10% →下から10%

 このように、二年目の一月期と春学期は、全ての科目で上位30%より上の成績、具体的には、上位10%を1.5単位、上位30%を3単位取ることができました。上位10%の科目のうち、気付く力については、最後のグループワークで原発関連の事故を未然に防ぐための組織文化について書いたレポートが高く評価されたことが、高成績の要因でした。この科目については、レポートの校正を率先して担当してくれた優秀な韓国系アメリカ人のメンバー等、チームメンバーに恵まれた面が大きかったです。他方、国際金融政策の経済学は、教科書に基づいて、国際マクロ経済をどれだけ理解しているかが問われる個人勝負の科目だったので、上位10%のAを取ることができ、自信を得ることができました。

 今学期の成績が開示されたことを受け、二年間の成績が全て出揃いました。振返ると、以下のような成績でした。

 A(上位10%)→2.5科目(エネルギーの地政学、気付く力、国際金融政策の経済学)
 A-(上から3分の1くらい)→10科目
 B+(真ん中)→3.5科目(アメリカの官民関係、貿易の政治経済学、大国の競争、パブリックナラティブ)


 GPAに換算すると、3.65でした。この成績は決してものすごく良いわけではないのですが、私にとって今回が初めて海外の教育機関で受けた教育だったことを踏まえれば、まあ納得のいく成績だったと言えるのではないかと思います。二年間授業を受け、客観的な成績を振返ってみて、個人的に以下のような気付きが得られました。

 一点目に、数理的・定量的な能力については、十分に世界の高いレベルでも張り合うことができるという自信をつけることができました。ケネディスクールは、入学審査の際に、アプリカントの数理的な能力を重視していると言われています。少なくとも、MPA2プログラムについては、入試の責任者が語っていた内容によれば、定量的な能力を重視して選考しているようです。(過去の記事)世界中から定量的な能力の高い学生が集まっている中、多くの定量的な科目、例えば、国際金融政策の経済学、エネルギー政策分析、グローバリゼーションの未来等において、上位10%又は上位30%の成績を取ることができたのは、自信になりました。私自身の過去の教育を振返ると、日本の小中学校での義務教育や、大学受験の過程で行ったトレーニングが、今の私の数理的・定量的な力のベースになっていると思います。欧米の教育を礼賛する声も多いですが、日本の教育を受けてきた人は、決して悲観的にならず、数理的・定量的な力について存分に自信を持っていいのではないかと感じました。

 二点目に、英語のライティングの分野で、英語のネイティブとも十分に勝負できることも学びました。入学当初は英語でメモライティングをしたこともほとんどなく、時間も人一倍かかってしまいましたし、良い評価も得ることができませんでした。しかし、Democracy Theoryの授業でJane Mansbridge教授から教わった英語ライティングのガイドライン(過去の記事)を意識するようにした結果、簡潔で意味の詰まった英文を書くことが徐々にできるようになりました。また、「要点は3つある」、「メリットとデメリットを比較した結果、このオプションが最も望ましい。」というように、論理的な構造の文章を書くように心掛けました。その結果、昨年の秋学期のアジアの安全保障の授業の最後の政策メモの課題や、直近の春学期のエネルギー政策分析の京都議定書のメモ課題でA評価をもらう等、今ではライティングに自信を持てるほどになりました。こうしたライティングの能力の基礎を作ったのは、日本の中学・高校で受けた文法重視の英語教育だと感じています。

 他方、今後も意識して力を伸ばしていかなくてはいけないのは、幅広く豊富な表現力・語彙力だと感じています。良い成績を取ることができなかった授業の一つに、パブリック・ナラティブがあります。この授業では、自分の過去の話(Story of Self)や聴衆との共通体験(Story of Us)を語ることで、聴衆との間に共感を生み出し、新しい活動に聴衆を巻き込んでいく手法を習いました。このストーリーを語る場面で、適切な語彙が思いつかないことが多くあり、ネイティブの学生や他の留学生との圧倒的な表現力・語彙力の差を痛感しました。同様に、大国の競争(Great Power Competition)の授業でも、自分の表現力・語彙力の弱さを痛感しました。(過去の記事)この授業では、アメリカや中国等の国際問題に対する立場について、微妙なニュアンスで表現しなければなりませんでしたが、表現力・語彙力のなさのせいで、直線的な表現でしか発言できないことが多くありました。(例:アメリカは〜すべきである。〜すべきでない。)こうした幅広く豊富な表現力・語彙力を身につけるためにも、地道に学術的な単語を単語帳を作って暗記する努力をするとともに、映画やドラマ等の日常会話で用いられる語彙も積極的に学んでいく姿勢を持ち続けたいと思っています。

2016年春学期の授業のまとめ

 2016年春学期に受けた授業4つと、一月期に受けた2つの授業の評価・感想を、載せておきたいと思います。春学期は、授業を3つのフルタームの授業と1つの半タームの授業に絞ったので、それぞれの授業に時間をしっかりと割くことができ、その分満足度も高かったように感じます。参考までに、過去の授業評価はこちら。(2014年秋学期2015年春学期2015年秋学期

1.気付く力(Noticing: A Leadership Challenge)

【講師】Max Bazerman
【内容】ハーバードビジネススクールにも籍を置くマックス・ベイザーマン教授による行動心理学・行動経済学の授業。1月期の一週目に5日間だけ行われる。ケネディスクールや教育大学院を中心に、全部で70人ほどの学生が受講していた。私自身はこの分野の前提知識がなかったが、Noticingという教授の著書に基づいて授業中のディスカッションが進められていくため、得られる知識・テイクアウェイが明確で、多くの学びがあった。例えば、チャレンジャー号の爆破事故をケースとして取り上げた回には、未然に防ぐことができたかもしれない危機的な事故を防ぐためには、組織の構成員が問題点に気づき、声を上げていくような組織文化を作ることが重要だという学びが得られた。成績評価の大半を占めるグループプロジェクトでは、Noticingの概念を活用して、仮想のクライアントに提言を行う。私は、UAEの原子力安全規制機関に対し、原子力関連の事故を防ぐためにどのような組織形態・文化を採用する必要があるか等の提案を行った。Noticingの考え方、特に、問題点や違和感に気付いた際にそれを積極的に指摘していく文化の醸成は、日本の組織にも取り入れていく必要があるのではないかと感じた。行動心理学・行動経済学の分野にあまり触れたことがないものの、この分野について一通りの知識を知っておきたいという方には、非常にコストパフォーマンスの高い授業だと思う。

2.競争力の政策(Policies for Competitiveness)
【講師】Fadi Farra
【内容】OECDでコンサルタントを務めた講師による競争力政策の授業。1月期の二週目に5日間だけ行われる。海外からの投資を誘致する政策、税政策、イノベーション政策、人材育成政策等のテーマごとに、教授の講義と学生間のディスカッションという形で授業が進行する。成績評価は、最終日に発表するグループプロジェクトが50%、授業参加が残りの50%を占める。今年度は、6人のチームごとに、ポーランドの競争力を高めるための政策について提案をまとめ、最終日には、ポーランドの元財務大臣にプレゼンを行った。教授は大変人柄が良く頭の切れる方であるものの、アカデミックとしてもポリシーメーカーとしてもやや中途半端なキャリアで、今後の政策立案に役立つ体系立った理論や具体的なテイクアウェイが得られたかという点では、少し物足りなかった。最終日の発表を除いて授業時間外に取られる時間も少ないため、0.5単位を効率よく取りたいという方には、オススメの授業である。

3.気候、エネルギー、メディアの対立(Controversies in Climate, Energy, and the Media: Improving Public Communication)
【講師】Christine Russell
【内容】ワシントンポスト等でジャーナリストを務めたクリスティーン・ラッセル教授による、メディアとエネルギー・気候変動の関係性に関して学ぶ半期の授業。ソーシャルメディアや、気候変動や北極等の特定のトピックに特化したメディアの台頭、著名人(ローマ教皇、オバマ大統領、レオナルド・ディカプリオ)のメディア露出が世論に与えた影響、台風や灌漑等の異常気象に関するメディアのカバレッジ等のトピックごとに、学生間のディスカッションを中心に授業が進行する。今年度は例年より受講学生が少なく、全部で15人ほど。ニーマンフェロー等のジャーナリストも授業を聴講していた。教授の優しい人柄のため、アットホームな雰囲気の中、ディスカッションに参加しやすかった。学期中を通じて、コースのために設けられたブログへの投稿を4回する必要があった他、異常気象、原子力・再エネ、北極の3つのテーマについてそれぞれライティングの課題が出された。全体的に緩い雰囲気で授業が進められていくので、きっちりとしたテイクアウェイを求めている人には物足りない授業かもしれない。個人的には、エネルギー・気候変動問題に対するジャーナリストの視点が得られたことや、アメリカのメディアの層の厚さを学ぶことができ、満足している。

4.エネルギー政策分析(Energy Policy Analysis)
【講師】Joseph Aldy
【内容】オバマ政権で環境・エネルギー政策のアドバイザーを務めたジョゼフ・アルディ教授による、エネルギー政策の定量的分析手法に主眼を置いた授業。受講学生は全部で20人強で、ケネディスクールの学生は7人、他はハーバードの工学系博士課程やMITの学生だった。費用便益分析や、割引率の分析結果に与える影響、炭素の社会的費用、キャップ&トレードや炭素税等の気候変動政策といったトピックごとに、関連の研究論文がリーディングとして与えられ、授業で教授がそれらに解説を加えていく。他にも、OPECゲームや京都議定書エクササイズが行われた。リーディングは必ずしも全部読む必要はないので、負担は決して大きくない。私は、可能な限り日本の事例を紹介する等、授業のディスカッションに貢献するよう努めた。授業の最後の5回は学生による最終ペーパーの骨子の発表を行う。私は、原子力発電所の稼働に関する費用便益分析を行い、教授・TAのオフィスアワーも含め、有用なフィードバックが得られた。ややテイクアウェイがふわふわしていたIGA-410(Energy Policy)と比べ、定量的手法に関する理解が一気に深まり、非常に満足している。

5.国際金融政策の経済学(The Economics of International Financial Policy)
【講師】Jeffrey Frankel
【内容】国際金融政策について、教科書を元に丁寧に解説をしていく授業。日本の大学以降触れていなかったマクロ経済学の理論についてアップデートしたいと思い、受講を決意した。授業は、期待していた以上に満足度の高いものだった。まず、教授自身が教科書の執筆者であるため、説明が非常にクリアで一貫していた。過去のフィードバックを踏まえてか、教授は意識して授業時間の多くを質疑応答に割いており、非常に丁寧だと感じた。また、理論のみならず、実際の世界で起きたことを引用しながら解説をするので、理論と実践の結びつきが得られやすかった。(例えば、アベノミクスや中国の為替政策、アメリカFRBの金融政策、ラテンアメリカ諸国のデフォルト等)さらに、学期を通じて計7回あるプロブレムセットを解く過程を通じて、授業中に習った理論に関する理解を定着させることができた。本授業を受講して、為替と経常収支の関係性や、外貨準備高と利子率の関係性、金融政策と財政政策の有効性等を体系的に学ぶことができ、国際経済に関するニュースへの理解が一気に高まったと感じている。

6.成人の発達(Adult Development)

【講師】Robert Kegan
【内容】ハーバード教育大学院のロバート・キーガン教授による発達心理学の授業。週一回の大教室での講義と、週一回のTAによる18人程度の少人数のセクションからなる。前年度の春学期にAdaptive Leadershipの概念について学ぶExercising Leadershipの授業を取り、多くの学びがあったことから、その理論的バックグラウンドになっているキーガン教授の発達心理学について理解を深めたいと思い、受講を決めた。ケネディスクールからも多くの学生がクロスレジスターしていた。キーガン教授の重要な研究成果は、人間は成人になってからも発達をし続けること、仕事や結婚、子育て等の人生におけるチャレンジが発達を促すこと、今まで見えなかったものが見えるようになる過程(主体から客体への移行)が発達であること、人間の発達は5段階に分かれ、多くの成人は他者からの評価・期待により自身の価値観が形成される第3段階と、価値観・理論を自ら構築できる第4段階の間に位置すること等が挙げられる。大教室での講義についても、一方的な講義ではなく、主体・客体インタビューと呼ばれるペアワークを行ったり、免疫マップと呼ばれるマップを共同で作成する等、学生を飽きさせないような工夫をしていた。世の中に対する新たな視点が得られたという観点で、非常に満足度の高いコース。残念ながら、キーガン教授の講義は今年度が最後。

イチロー選手と豊田章男社長の対談

 このブログではあまり書いてきませんでしたが、僕は、人生において何か壁にぶつかったり、仕事でつまづいた時には、一流のスポーツ選手の考え方・生き方から、ヒントを得ることが多くありました。僕自身、中学一年生からバスケをずっとやっていたので、医師の辻秀一先生が書いた「スラムダンク勝利学」にはかなり影響を受けてきました。この本では、目の前のことに全力で取り組む、今に集中するといった、一流のスポーツ選手のメンタルのあり方を解説していて、仕事が辛かった時などに励みにしていました。この本に限らず、サッカーの長谷部誠選手の「心を整える」や、松井秀喜選手の「不動心」など、一流のスポーツ選手の本を意識して多く読むようにしてきました。

 最近、イチロー選手と豊田章男社長の対談がYou Tubeにアップされていたのを発見しました。イチロー選手が打撃のフォームを毎年変えている姿勢は、トヨタのカイゼンの哲学に通じるものがあるなど、色々と学びがあり面白かったです。また、今学期受講しているAdult Developmentとの関係でも、大きな気づきが得られました。特に注目してほしいのは、動画の42秒あたりです。豊田社長が、「(フォームなどを)抜本的に大きく変えた経験はあるか」との質問に対し、イチロー選手は、振り子打法への変化もそんな大した変化ではないと言い切り、むしろ考え方の変化の方が大きいと答えます。

最近ではもう、人が求めることを自分が追いかけるというよりも、自分が追いかけていることに、ついてこられる人はついてこいよという・・・人の評価というのが僕にとってあまり大事でなくなっている傾向は顕著にありますね・・・人の期待に必ず応えなければならないという点について、僕は外せてしまう。もちろん無視はできないけど、好き勝手やってもいいじゃないかという感覚がすごくここ何年か顕著に出てきています。

 イチロー選手がこの考え方の変化を最も経験したのは、年間最多安打数の記録を更新した2004年だったといいます。このとき、イチロー選手は30~31歳で、僕とほぼ同年齢です。
 以前の記事に書きましたが、このイチロー選手の考え方の変化は、Adult Developmentの理論で言うところの、第三段階(Socilized Mind)から第四段階(Self-Authoring Mind)への変化に近いのではないかと感じました。つまり、他者や社会への期待に応えることを最大の目的としていた段階を乗り越え、自分の価値観・フォームを自ら構築している段階に進化しているということです。

 この動画を見て学んだことは、一流の選手・仕事人というのは、人生のどこかの時点で、他者の期待や社会の要請に単に応えることを繰り返していては本当に良い仕事はできず、自ら価値観・仕事の進め方などを構築していく必要性に気付いているということです。イチロー選手のようなプロのスポーツ選手と、組織で働く僕のような人では、置かれている環境が違います。僕自身に適用して言えば、組織の求めること、上司の求めることに確実に対応して成果を出していく段階から、徐々に、自分自身の価値観に基づき、仕事を通じて成し遂げたいことに対して、リーダーシップを発揮して周りを巻き込んでいく段階に移行していくということだと思っています。といっても、僕はまだ組織できちんとした実績を残したわけでも、信頼を勝ち得ているわけでもないので、いきなりリーダーシップを発揮して自分のやりたいように仕事を進めようとしては、ただのセルフィッシュな社員となってしまいます。イチロー選手の20代がそうであったように、まずは、周囲の期待することにしっかりと応えて、信頼を獲得していくことから始めていきたいと思っています。

コミュニケーションワークショップ

 ケネディスクールにはコミュニケーションワークショップと呼ばれる、1時間30分で完結するコミュニケーションのあらゆる側面、スピーチやライティング、聞く力などに焦点を当てたワークショップが開かれています。(ウェブサイト)これまで2年間あまり熱心に参加してこなかったのですが、卒業も近づいてきて、このような機会も今後ないと思うようになり、積極的に出るようにしていました。一学期間ずっと授業を取るのに比べて、ポイントに絞って講義をしてくれるので、テイクアウェイもはっきりしていて費用対効果の高いワークショップだと感じました。以下、簡単に、最近出たコミュニケーションワークショップから得られた学びです。

1 ライティングのワークショップ:“How to Write about Social Justice” (講師:Alexandria Marzano-Lesnevich)
 社会的な不平等の問題の解決に積極的に活動する講師による、ライティングのワークショップ。これまで、政策メモなど、意思決定者に対して論理的に意見を伝える文章の書き方は集中的に訓練してきたものの、こうした社会的問題に対して世の中の注意を喚起するような文章の書き方は習ってこなかったので、それについて習いたいと思ったのが参加したきっかけ。

抽象と具体のはしごを上り下りする(Move up and down the ladder of abstraction)。良い文章とは、抽象的な言葉、具体的な言葉、その中間にあたる要約の3つのレベルを行ったり来たりする文章。抽象的な言葉だけでは、読者は共感を覚えることができない。逆に具体的な事例のみでは、汎用的なテイクアウェイが得られず、読者は満足することができない。文章を書くときには、抽象と具体の言葉を混ぜ合わせることが重要
トピックを選ぶ時は、はじめから一つに決めず、複数のトピックをブレインストーミングするべき。そうすることで、より多くのトピックを考えるよう自分にプレッシャーをかけることができ、本当に書きたいトピックが見つかる可能性が高まる。また、自分の身近な大事な人にとって重要だと思われるトピックをいくつか挙げてみるのも、新しいトピックを見つける上で有用。
文章の焦点を絞り込むことが重要。何を書くかを決めることは、何を書かないかを決めること。自分の書きたい分野を絞り込む過程で、何を書かないかを明らかにしていくことが大事。文章の焦点が絞られていれば絞られているほど、読者の共感を得る可能性が高くなる
キャラクターを用いることが大事。特定のキャラクターを使って、小さな旅をさせ、社会とのインタラクションをさせることで、読者はその問題を広く、大きく捉えることが可能になる。


2.インタビューのワークショップ“How to Get the Best of Your Interviewees”(講師:Joanna Jolly)
 BBCのジャーナリストによる、効果的なインタビューの方法・心構えに関するワークショップ。今後仕事をしていく上でも、民間企業をはじめ様々なステークホルダーにインタビューをして、情報を収集するスキルは求められる。他にも、現在取っているAdult Developmentの授業で、コーチングの概念を学んでいるが、どうやって相手から信頼を得て、心を開いて、本音を話してもらうかに苦労している。BBCで、家族が殺人事件の被害者になってしまった人などにインタビューをしてきた講師から、難しいインタビューを成し遂げるノウハウを学びたいと思って、受講を決めた。

インタビューに本格的に入る前に、相手を温めること(Warming Up)が重要。相手とスモールトークを始める、相手とアイコンタクトをする、オープンで攻撃的でないボディランゲージを示すなどして、相手との間で信頼関係(rapport)を築くことが重要。
いきなり核心に迫る質問をするのではなく、ゆっくりとインタビューを進める。一回のインタビューで相手から信頼を得られることは少ない。何回もインタビューして初めて信頼が得られ、本当のことを話してくれるようになるということがある。
うなづき(Nodding)を効果的に用いる。通常、テレビのインタビューではインタビュアーは静かにしていなければならない。そのため、言葉で合いの手をうつのではなく、うなづき(nodding)を効果的に用いることで、相手にaffirmationを与えることを意識している。また、相手の状況に合わせて声のトーンを小さくするなど共感を示すことで、相手に信頼をしてもらえることもある。
インタビュー前の入念な準備が何より重要。インタタビュイーは必ずしも真実を語らないことがあり、それを見抜くためにも事前の勉強が必要。
How do you feel?と単刀直入に聞くことが失礼にあたるケースもある。特に、ショッキングな事件が起きた直後のインタビュイーに対しての言葉遣いは気をつけるべき。What emotion do you associate with the event?と聞くことで、間接的に相手の感情を引き出すことも可能。

Appendix

プロフィール

tak

Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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