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リーダーシップの最終授業と得られた学び

 今日はリーダーシップ(Exercising Leadership)の最後のクラスがありました。前々回の記事にも書いたとおり、この授業は学期中を通じて、リーダーシップのあり方やグループダイナミクスについて様々な発見を与えてくれた授業でしたが、最後のクラスでは、自分にとって学びの総まとめになるような出来事が起こったので、忘れないうちに書いておきたいと思います。また、ちょうど安倍総理の訪米、議会での演説の内容とも関係する学びがあったので、それについても書きたいと思います。(一部、機微な内容もあるので、見返してみて問題があると思ったら、後ほど削除する可能性もあります。)

 前回の授業では、複数のインターナショナルな学生が、議論がいつもアメリカ中心(US-centric)になって、議論に参加するのが難しいという発言をしました。この授業では、人種やジェンダー、セクシャリティーなどのテーマがアメリカの文脈で語られることが多く、また、弁の立つ自己主張の強いアメリカ人が積極的に発言をしていたので、英語を母国語としないインターナショナルな学生は、アメリカ人学生と比べ、授業にあまり参加できていない状況が続いていました。僕も、そうした効果的な発言ができないでいるインターナショナルな学生の一人でした。こうした前回の授業の流れを受けて、冒頭、一人のアメリカ人の女子学生が、「前回の授業で、インターナショナルな学生が議論に参加しづらいと言っていたり、自分たちの意見が尊重されていないと感じると言っていた。インターナショナルな学生がどう思っているのか、もっと知りたいし、是非シェアしてほしい。」という発言をしました。僕はこの発言に感銘を受けて、以下のような発言をしました。「インターナショナルな学生の発言を促す、今の彼女の発言に感謝したい。僕がこの授業で学んだ最も重要なアイディアは、いかに普段おとなしい人が発言できるように促せるかということ。今振り返れば、僕は母国では常にマジョリティの立場にいることが多く、マイノリティにいる人や、中々発言ができないでいる人の気持ちを知らず、彼らに配慮することができていなかったと思う。この授業を取って、日本で生まれ育った自分は、初めてマイノリティの立場に置かれて、いかに議論に入っていくかが難しいかを知った。母国に帰って、リーダーシップを発揮する際には、中々発言できないでいる静かな人たちの発言を促していきたい。」この発言は僕の本心から出たものです。僕のこの授業の最大のテイクアウェイは、いかに大人しい人や、何らかの理由で意見を表明することを恐れている人たちの隠れた見解(Hidden Perspective)を引き出し、彼らに議論に参加し、問題に取り組んでもらうかが、リーダーシップを発揮する上での鍵だということです。自分自身がこの授業で感じた、議論に中々参加できないでいるもどかしい気持ちやフラストレーションを経て、初めてそうした大人しい人の気持ちが分かった気がしています。リーダーシップというと、どうやって説得的なビジョンを打ち出すかや、自分の意見をいかに押し通すかという、リーダーシップを取る側の観点が重視されがちですが、この授業をとって、むしろ、いかに周りの人たち、特に静かな人たちに配慮して、彼らの持つ貴重な考えや多様な意見を引き出していくかが大事だと思うようになりました。
 
 この僕の発言の後、二つの面白い出来事が起こりました。一つは、僕の発言をきっかけに、普段は授業中大人しい同じ小グループのメンバーが、次々に発言をしたことです。発言の連鎖反応のようなものが起こりました。Adaptive Leadershipの重要なコンセプトの一つである、連携(Making an Alliance)の良い例だったように思います。実は、この週の初めにあった小グループのセッションで、なぜ僕たちの小グループのメンバーが大教室での発言が少ないのかということを議論しました。議論の結果、大教室で、互いにサポートし合い、連携をきちんと取ってこなかったからじゃないかという結論に至りました。その議論のことが小グループのメンバーの頭の中に残っていたのか、僕の発言を引用するような形で、ほぼ全員の小グループのメンバーが、互いをサポートし合う発言をしました。一人一人の権威や影響力は小さくても、仲間づくりをし、互いに連携を取り合うことで、効果的なインパクトを与えることができるということを学びました。Making an Allianceの他にも、この連鎖反応について、僕はもう一つ仮説を持っていて、一人の人物の勇気ある行動やリスクを取った行動が、周囲の人たちを刺激し、行動を促すことがあるということです。こうした出来事を、僕は学期中を通じて何度も観察してきました。実際、僕は、普段大教室ではそんなに発言をできていなかったので、この日も手を挙げて発言するのにかなりの勇気が必要でした。きっと、そうした僕のリスクを取った行動を見て、僕の小グループのメンバーも触発され、発言をしたのではないかと思っています。

 二つ目に、韓国人女性の学生が、コントラバーシャルな話題でもある慰安婦問題と絡めて、発言をしたことです。前回の記事にも書いたとおり、安倍総理のケネディスクールでの講演の日の朝に、ハーバードの韓国人学生が慰安婦問題に関するサイレント・デモンストレーションを起こしました。僕とその韓国人女性の学生は、このリーダーシップの授業を通じて知り合い、4月に10人くらいで日韓合同ディナーなども開くなど、互いを知っていて、普段は友人関係にありました。サイレント・デモンストレーションの前日に、彼女はわざわざ僕のアパートメントの近くまで来て、事前に話をしておきたいと言って、彼女自身がデモンストレーションに参加する理由を伝えてくれました。僕自身は、恥ずかしながらこの問題については勉強不足だと認識していましたし、この場で議論することは適切ではないと思ったので、自分の意見を強く主張することはせず、彼女の意見や想いを聴くことに専念しました。彼女は、控えめながらも、この問題に対しては相当強い感情を抱いていて、その想いをぶつけてきました。15分~20分くらい話をして、最後は握手をして別れました。リーダーシップの最後のクラスで、彼女は手を挙げて、安倍総理が来てデモンストレーションに参加した、前日に僕と会って想いを伝えた、僕が彼女の気持ちを理解しようと一生懸命聴いてくれたことに感動した、何を話しても大丈夫だという安心感を与えてくれた、こうした姿勢はこの授業で学んだリーダーシップのあり方と通じるものがある、という趣旨の発言をしました。僕自身、この出来事が授業中に話されるとも思っておらず、自分にこんなスポットが当たると想像もしていなかったので、驚きました。僕は、慰安婦問題について正しく議論できるほどの知識がその時点ではないと思ったので、あえて自分の意見を強く主張せず、相手の意見を聴いて、感情に共感することに努めたに過ぎないのですが、そうした姿勢が相手の心を打つことがあるということを学ぶことができました。彼女の発言のおかげで、リーダーシップを取る際に重要なのは、相手の意見や気持ちに耳を傾けること、どんな意見も受容されるような安心感のある場所を提供することだというレッスンが得られた気がします。

 この授業で得られた学びは、今受講しているDemocracy Theoryの授業での学びと通じるものがあります。Democracy Theoryでは、いかにして人々の声が反映されるような政治の仕組みを作るかや、人々の政治や地域社会、職場への参画を促すことの効用(彼らの人格的成長に寄与する、正しい意思決定につながる)、といったテーマを学んでいます。ケネディスクールでは、リーダーシップの授業にせよ、Democracy Theoryの授業にせよ、多くの人々を関与させて、多様な意見を取り入れながら、社会をどうより良くしていくかということを、日々徹底的に考えさせられている気がします。安倍総理は、ちょうど今日行われたアメリカ議会でのスピーチでも、日本はアメリカとDemocracy(民主主義)の価値観を共有する、世界第二位の民主的な国家として、アメリカとともに世界の課題解決に貢献していくというメッセージを発していたと思います。ケネディスクールの残りの日々では、こうした民主主義の考え方や、リーダーシップのあり方を徹底的に吸収して、日本に戻った時に、自分の組織や職場に生かしていきたいと思いました。

MLD-201B_class_photo_0429
リーダーシップの授業で最後に取った集合写真
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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