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春学期の授業のまとめ

 春学期に受講した授業の感想・評価を、1月期に受講したArts of Communicationsの授業と合わせて、載せておきたいと思います。全体的に、1月期と春学期に取った授業は、秋学期に取った授業と比べ、どれも満足度が高く、当たりでした。

1 コミュニケーションの技法(DPI802MA:Arts of Communications)
【講師】Holly Weeks
【概要】
 人を動かす上で効果的なスピーチのあり方について、実践とフィードバックを通じて学ぶ授業。二週間で、4分のスピーチ(+2分の質疑応答)を計3回と、オプショナルで即興スピーチを1回します。5〜6人の小グループに分かれ、互いのスピーチに対して、話の組み立て方やストーリーの使い方、ボディランゲージ、表情、アイコンタクトなどを含め、細かくフィードバックを与えます。0.5単位が得られます。
【主観的コメント】
 アリストテレスの弁論術をベースに、ロゴス(論理)、パトス(感情)、イートス(人柄)の3つが人を説得する上での重要な要素だととらえ、それぞれの要素をどのように活用してスピーチを行うかを学んでいきます。私自身は、これまで受けてきた教育の中で、論理的な発表の組み立て方などのロゴスの部分を中心にトレーニングしてきたので、3つの要素が全て必要だという説明は、眼から鱗でした。二週間を通じて合計3回のスピーチだけなので、この授業を取っただけで劇的にスピーチ力が向上するということはないかもしれません。ただ、ロゴス、パトス、イートスの枠組みや、自分のスピーチの強い部分、弱い部分を学生間のフィードバックを通じて客観的に知ることができたので、非常に有意義でした。今後、この授業で学んだ点を意識しながらプレゼンの数をこなしていくことで、徐々にスピーチ力を高めていければいいかなと思います。また、この授業を通して、人前で英語で話をすることに対する心理的な抵抗感が小さくなり、春学期の授業では前学期よりも積極的に発言できるようになるなど、副次的な効果もありました。パトス(感情)に訴えるために必要なストーリーの組み込み方など、今後の課題も見えました。
 インストラクターのホリー・ウィークス先生は、学生に対して親身で、温かみのある情熱的な女性で、非常に好感が持てました。感情の部分を強く強調する先生だったので、中には、ウィークス先生のアプローチがあまり好きでないと不満を述べていた学生もいました。イメージとしては、TEDトークでどのように効果的なプレゼンをするかを学ぶような授業です。個人的には、日本社会において全ての場合にTEDトークのようなプレゼンが高く評価されるとは思いませんが、自分のプレゼンのレパートリーを広げるという意味で、取ってよかったと思えるコースでした。

2 民主主義の理論(DPI216:Democracy Theory)
【講師】Jane Mansbridge
【概要】
 アリストテレス、マキャベリ、ホッブズ、ロック、ルソー、ミル、シュンペーター、ハーバーマスなどの政治哲学者の原著を読み、なぜ民主主義が他の制度に比べ、人々に合理的な強制(LegitimateCoercion)を与える上で優れた制度と言えるのかを学んでいく授業。評価は、クラスパーティシペーション、計7回の500字のリーディングレスポンス、計3回の授業中に15分間行われる理解度確認テスト、最終レポートの4つで決まります。週二回の授業の他、金曜日にTAによるレビューセッションが開かれました。
【主観的コメント】
 私は政治哲学のバックグラウンドがなく、高校の倫理の授業以来初めて触れたというレベルだったため、アメリカ人でさえ読むのに苦労していた古典を原文で理解するのに非常に苦労しました。最初のアリストテレスの授業がほとんど理解できず、危機感を覚えた後は、日本語で文献をKindleで購入し、それぞれの思想をざっくりと頭に入れてから原著を読むようにしたところ、何とか授業についていけるようになりました。学期中を通じて扱うテーマは、共通善(CommonGood)、自由(Liberty)、人格の涵養(DevelopmentOfFaculties)、抵抗(Resistance)、社会契約(SocialContract)などです。それぞれの古典で書かれている内容は、時代や社会的背景も異なるので、そのまま現代社会に応用することはできないと感じました。ただ、毎回の授業の発言やリーディングレスポンスでは、それぞれの政治哲学者の思想を、現代の母国における問題にどのように活用できるかという点に重きが置かれるので、何らかのテイクアウェイが得られます。最終レポートでは、自分が重要だと思っている問題について、授業中に扱った政治哲学の考え方をベースに、分析を加えていきます。私は、権力を監視し、合理的で批判的な議論(RationalCriticalArgument)を展開する公共空間(PublicSphere)の役割について論じたハーバーマスの思想を用いて、日本のエネルギー政策にどのように民意を取り入れていくべきかというテーマのペーパーを書きました。
 この授業を取って何が得られたかを一言で言うのは難しいですが、有名な政治哲学者の基本的な思想について自分なりの言葉で話せるようになったほか、アメリカが建国以来大切にする民主主義の思想について理解を深められたと思っています。ジェーン・マンスブリッジ教授は、御年70歳代後半ですが、常に授業を前年度よりも改善しようと努めていて、そのエネルギーに感銘を受けました。最終レポートの作成にあたっては、一人当たり2回オフィスアワーを開催し、親身にテーマ設定や内容の議論に付き合ってくれるなど、学生に対して非常にサポーティブでした。受講している学生も、中国や香港、インド、マレーシア、イスラエル、ケニア、アルゼンチン、コロンビア、トルコなど、インターナショナルな学生の割合が多く、互いの発言から学べることも多い授業でした。

3 リーダーシップの行使(MLD201B:Exercising Leadership: The Politics of Change)
【講師】Hugh O'Doherty
【概要】
 ハイフェッツ教授の考案した適応型リーダーシップ(AdaptiveLeadership)のフレームワークを、大教室によるディスカッションと、6〜8人の小グループによる毎週のミーティングによって、学んでいくコース。小グループでは、自身の過去のリーダーシップの失敗経験を話し、それに対し他のメンバーが分析を加え、どのような行動を取るべきだったかを提案します。その他、3回の映画鑑賞と、3回のミュージックナイトが開かれました。MLD201A〜Cはどれも同じ内容を扱いますが、教授が異なります。ハイフェッツの教えるMLD201Aを取るにはビッディングが必要で、今年度は700点以上必要でした。評価は、クラスパーティシペーションが30%、毎週のクエスチョネアが40%、最終レポートが30%です。
【主観的コメント】
 学期当初は、教授が何も介入しない授業の進め方に懐疑的でしたが、日本で考えもしなかったような様々な気づきが得られ、最終的には取って良かったと思えたコース。リーダーシップというよりは、グループダイナミクスを分析するためのコースに近いと思います。大教室では、教授が全く介入せず、議論を学生に委ねる中で、どういった学生のどういった発言がクラスの中で信頼を得ていくか、逆にどういった発言は無視されてしまうのかといったことを分析します。小グループでも、規模は小さくなるものの、同じような分析を毎週行い、クエスチョネアに回答する必要がありました。権威(Authority)とリーダーシップの違い、システムの中で表明されていない見解(HiddenPerspective)をどのように浮き上がらせるか、メンバーが真の課題に直面しようとしない現象(WorkAvoidance)をどのように解決するか、といったことを学びます。私自身、アメリカ人主導になりがちな大教室のディスカッションへの参加に苦労しましたが、なぜ参加しづらいと思うのか、毎週のクエスチョネアで内省を迫られました。そうしたマイノリティとしての体験・グループダイナミクスに翻弄された経験は貴重で、今後組織を率いて何かを成し遂げようとするときに、きっと役に立つと思いました。
 小グループに一人TAがつきますが、そのTAの働きぶりによっても得られる学びの大きさが違うと感じました。私の小グループは、MITの博士課程の学生で、毎週細かいフィードバックのコメントを返してくれました。おかげで、より深い内省を行うよう毎週迫られ、その分、得られる学びも大きくなったと思います。他方、TAが毎週きちんとコメントを返さないような小グループもあり、それらの小グループにいる学生は不満を漏らしていました。最終レポートの前に、O'Doherty教授とTAと一回ずつオフィスアワーで話をした際には、非常に親身にアドバイスをくれました。最終レポートで、自分のプロフェッショナルな経験を振り返り、今後AdapativeLeadershipのフレームワークを用いてどのようにリーダーシップを発揮していくべきかを書いた経験は、非常に役立ちました。

4 エネルギーの地政学(IGA412:Geopolitics of Energy)
【講師】Meghan O'Sullivan
【概要】
 アメリカのシェール革命が、アメリカやロシア、中国といった国々の外交政策にどのような影響を与えるかを学ぶコース。受講学生はHKS以外にも、MITスローンやフレッチャーからのクロスレジスター、安全保障関係の研究フェローなど、合計で60人程度。評価は、クラスパーティシペーション、YesかNoで答えられる質問に対する立場を述べる350字のTakeAPositionペーパーを二回、シングルスペース3枚のポリシーメモを二回、特定の石油代替技術を取り上げてその地政学的インプリケーションを論じるグループプロジェクトの4つから決まります。今年度は、ビッディングポイントが約300点必要でした。
【主観的コメント】
 教授は、ブッシュ政権でイラク・アフガニスタンに関する安全保障アドバイザーを務めたメガン・オサリバン教授。まだ40歳代で若く、ケネディスクールの中でも、実力、人気ともに高い教授です。学生の名前を全員覚えようとしたり、ハッピーアワーを開催して学生と交流しようとするなど、非常に好感が持てました。秋学期に受講したヘンリー・リーのエネルギー政策の授業では、主に各エネルギー源の長所・短所を工学的に分析しましたが、この授業では、エネルギーを「外交政策のツール」及び「外交政策の目的」の二つの側面があると定義し、エネルギーが国際政治に与えるインプリケーションを中心に学びました。日本も、石油の世界第三位の輸入国、LNGの世界最大の輸入国として、国際政治上大きな存在感を発揮しているので、その観点からディスカッションに貢献することができました。
 授業を受講している学生は、サウジアラビアの国営石油企業サウジアラムコの幹部や、元米国海軍、カザフスタンの原子力公社、シンガポールの防衛省、イラン、イラク、クウェート、南スーダン、スーダンの学生まで、非常に多様なバックグラウンドの学生が集まりました。毎回の授業で扱うトピックは、エネルギーと民主主義の関係、ロシアのエネルギーを武器として用いた外交、OPECの石油政策、アメリカの中東関与、中国のアフリカでの資源外交など、広範にわたりました。全体として、広く浅くという感は否めませんが、エネルギーや国際政治に関心のある人にとっては、非常に学びの多い授業だと思います。個人的には、日本も、エネルギー政策を立案する際に、こうした国際政治や安全保障上の観点をもっと考慮していくべきではないかと感じました。また、ポリシーメモの書き方やプレゼンテーション、ディスカッションのマネージの仕方など、一流の実務家でもあるオサリバン教授から学ぶことも多くありました。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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