Entries

インターンの総括

 6月1日~8月21日までのインターンを終え、ボストンに戻ってきました。携帯電話の契約を再開させたり、スクリーンが破損していたMacbook Proの修理を出したり、コースアシスタントの事務的な手続きをしたり等、新学期に向けて意外とばたばたと過ごしています。また、前回の記事にも書いたとおり、ボーゲル先生との今年度のボーゲル塾の方針に関する打合せや、オサリバン教授の授業のシラバスの改訂のお手伝い、授業の課題を整理するためのDrop Boxと呼ばれる文書共有ソフトの立ち上げ等、今週やらなくてはいけないことがいくつか溜まっています。他にも、今年からボストンに来る友人(会社の同期がフレッチャースクールやハーバードロースクールに来たり、大学院時代の国際交流サークルの同期がMITスローンに来たり、大学院の同じ専攻の友人がハーバードビジネススクールに来たりします)とご飯を食べたり等、交流もそれなりに忙しくしています。ヨーロッパで3か月を過ごした後と比べると、ボストンでは街を歩く人たちもどこかせわしなく動き回っているようで、時間の流れ方がアメリカとヨーロッパでは違うなというのを早速感じています。

 さて、3か月のIAEAで学んだことを、備忘録として、個人的なレポートの形で書き記しました。以下に、その内容について紹介したいと思います。(一部、これまでのブログの記事で書いていたことと重複することもあります。)

1.業務の概要
 2015年6月1日〜8月21日までの日程で、オーストリア・ウィーンにある国際原子力機関(IAEA)でインターンシップを行った。IAEAでのインターンを志願した理由は、(1)ケネディスクールで研究しているエネルギー政策のうち、原子力エネルギーに関する世界的な動向や国際協力のあり方について知見を深めるため、(2)国際機関内の意思決定や職員の働き方について内部から観察するためであった。

 私は、Department of Nuclear Energy(原子力エネルギー局)、Division of Nuclear Fuel Cycle and Waste Technology(核燃料サイクル・廃棄物技術課)、Waste Technology Section(廃棄物技術部門)のうち、Predisposal Team(廃棄物処理チーム)に配属となった。具体的な業務としては、以下の3点を行った。

(1)放射性廃棄物処理の経済性に関するIAEA文書の作成
 IAEAの廃棄物技術部門では、メンバー国の廃棄物処理に関する能力構築を目的として、放射性廃棄物の処理・処分に関する安全性のガイドラインや技術的文書を発行している。私は、そのうち、Economics of Radioactive Waste Management(放射性廃棄物管理の経済性)という文書の編集・執筆を担当した。本文書は、放射性廃棄物処理に係る費用・実行可能な計画に関する透明性の低さが各国における原子力発電所導入の障壁の一つとなっているとの問題意識から、放射性廃棄物処理に係る費用(cost)や負債(liability)の算出手法等を整理したものである。本文書は、IAEA内の手続きを経て、IAEAの公式文書として発行される予定である。本文書を活用し、各国政府が放射性廃棄物処理に係る費用・実行可能な計画を国民に適切に提示し、原子力発電所に関する国民の信頼の向上が図られることが期待される。

(2)廃棄物技術部門の成果指標の設定に向けた調査分析
 廃棄物技術部門では、安全性に関するガイドラインや技術的文書の出版活動や、メンバー国の能力構築を目的としたワークショップの開催、専門家同士の交流を促すためのネットワーキング活動など、様々な活動を行っているが、それらの活動の成果について評価するための手法が不十分な形でしか存在していなかった。そのため、部門として、活動の成果を適切に評価するための手法を考案することとなった。私は、廃棄物技術部門のSection Headからの依頼に基づき、世銀や国連等の国際機関やオックスファム等の非営利組織の評価手法や、IAEA内の他部門のベストプラクティスについて情報を収集・整理した上で、廃棄物技術部門が目指すべき成果指標について提案(既存の定量的指標をメンバー国の視点を反映した形に向上させる、技術的文書が実際にメンバー国の政策形成にどのような影響を与えたか等に関する定性的指標を導入する)を行った。

(3)放射性廃棄物管理の安全等に関する条約に基づく各国報告書の要約の作成
 IAEAのメンバー国は、Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and on the Safety of Radioactive Waste Management(放射性廃棄物管理の安全等に関する条約)に基づき、放射性廃棄物の管理方針や、放射性廃棄物の存在量に関する目録(inventory)等を記載した報告書を、3年毎にIAEAに提出することになっている。これらの報告書は、大半が100ページを超える分量となっており、他の業務も抱えるIAEA職員は、その内容を必ずしも把握できていないとう問題があった。私は、2015年の夏までに提出された各国の報告書のうち、Predisposal(廃棄物処理)に関する情報をA4一枚程度に要約し、チーム内に共有した。これらの要約された情報は、チーム内のメンバーがIAEAの幹部職員にブリーフィングをする際等に、実際に活用された。

2.業務を通じて得られた知見
(1)原子力エネルギーのバックエンドに関する知見
 放射性廃棄物の処理・処分、使用済核燃料の処理・処分、原子力発電所の廃炉等のバックエンドと呼ばれる工程について理解を深めることができたのが、今回のインターンシップの一番の収穫である。原子力発電所の導入の是非の議論に関しては、津波や地震が起きた際の安全性をいかに向上させるかに焦点が当たりがちであるが、放射性廃棄物をいかに処理・処分するかに関する不安の声も大きいのが現状である。その観点から、バックエンドに関して技術的・経済的に実行可能な計画を立案することは、原子力発電所に対する信頼向上に向けて重要だと考えられる。また、IAEAの廃棄物技術部門では、Disposal(処分)とPredisposal(処分前工程=処理)について、チームを明確に分けている。廃棄物の問題については、最終処分場の選定等の「処分」に焦点が当たりがちだが、実際に処分方法を決定するまでには多大な時間がかかることが想定される。処分方法が最終的に決定される前までの間、廃棄物の分量を減らし、放射性物質を低減し、安全な形で貯蔵する「処分前工程」について方針を決定することが、原子力発電所に対する国民の信頼向上につながっていくと考えられる。

(2)国際機関の働き方に関する知見
 以上のとおり、原子力エネルギーのバックエンドに関する知見を得ることができた他、実際にインターンとしてIAEAの正規職員と机を並べて3ヶ月間勤務する経験を通じ、欧州の国際機関におけるワークライフバランスについて、理解を深めることができた。我が国でも、ゆう活などの働き方改革、女性の更なる活用などを推進している。IAEAの職員は、家庭の事情を優先し早く帰宅したり遅く出勤する、二週間から四週間程度の夏休みを職員が取る等、柔軟でゆとりのある労働環境を実現していた。柔軟な労働環境に関し、有給やフレックスタイム制等の制度が整っているだけでなく、働く人々の意識の根底に、私生活の充実があってこそ仕事の生産性も向上するという意識が根付いているように感じた。日本の職場に復帰した際には、柔軟で、かつ生産性が向上するような働き方に関する国際機関の優れた慣習・意識が導入されるように働きかけていきたいと考えている。

 また、国際機関と日本の職場の中での仕事の取り組み方に大きな違いがあることも理解できた。日本の職場では、少なくとも私のような若い職員にとっては、上からの指示に基づき、対応すべき仕事が恒常的にあるのが当たり前であった。他方、国際機関では、受け身の姿勢で待っているだけで仕事が与えられることはなく、自分から仕事を作っていく姿勢が求められた。特に、オフィスのレイアウトの観点から、基本的に一人一つの部屋が与えられているため、他の職員と交流しようと思わなければ一日を一人だけで過ごすことになりかねない。こうした状況を避け、自分の仕事を作っていくためには、自分にできること・やりたいことを明確に示し、他の職員に対してアピールしていく姿勢が重要であると感じた。私自身、3か月という期間で自分の仕事を作っていくことに苦労したが、留学先で経済学・公共政策学を学んでいることを主張することで、放射性廃棄物の経済性に関する文書の編集や、部門の成果手法の検討を任せてもらうことができたと感じている。今後国際機関で働く機会があれば、自ら仕事を作っていく姿勢を心掛けて、仕事に取り組んでいきたいと考えている。

View from the Office
オフィスからの景色

Hofburg Palace
ホフブルグ宮殿
Related Entries
Use trackback on this entry.
http://wearewhatwechoose.blog.fc2.com/tb.php/115-6710f2db

Trackbacks

Comments

Post a comment

Post a comment
Only the blog author may view the comment.

Appendix

プロフィール

tak

Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

最新トラックバック

ページビュー数

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR