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ケネディスクールを出てからのキャリア

 ケネディスクールにいると、今まで自分が当たり前だと思っていたキャリアの考え方について改めさせられることが多いです。最も若い人たち、しかもアメリカ人比率が高いプログラムであるMPPの学生は、ケネディスクールに来る前はPeach CorpやTeach for AmericaといったNon Profit Organizationで働いていた人が多く、ケネディスクールの修士の学位を武器に、卒業後にマッキンゼーやボストンコンサルティングなどのコンサルティング業界や、ゴールドマンサックスなどの投資銀行、残念ながらあまり割合は多くないですが、アメリカ国務省などの連邦政府に就職することを目指す学生が多いです。MPA2については、約半分がアメリカ人、残り半分がインターナショナルの学生という比率ですが、アメリカ人については他大学のMBA(ウォートンやMITスローン、スタンフォードMBA)とのジョイントディグリーの学生が多く、彼らはMPPと同様にコンサルティング業界や投資銀行、一部は社会起業を目指している学生が多いです。インターナショナルの学生については、自国の政府や企業に戻るという人や、ヤング・プロフェッショナル・オフィサー(YPO)やジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)の制度を用いて、国連や世銀のような国際機関への就職を目指している学生がいます。平均年齢40歳のミッドキャリアの学生については、既にアメリカ国内や自国で一定程度の実績・成功を収めている人が多く、ケネディスクールでの1年間を終えて、再び自分のフィールドに戻る学生が多い印象です。中には、退役した軍人で、マッキンゼーやブーズアレンのようなコンサルティング企業への就職を目指す学生もいます。

 さて、今日は、自分が今学期メガン・オサリバン教授と一緒に授業を作っていくという役割を担っていることもあり、彼女のキャリアから色々と考えさせられることがあったので、それについて書いておきたいと思います。僕は彼女をかなり尊敬しているので、少しバイアスがかかっているのはお許しください。彼女はジョージタウン大学で学士号を取得後、イギリスのオックスフォード大学で経済の修士号、政治の博士号を取得しています。その後、ブルッキングス研究所の研究員や北アイルランドの平和構築プロセス、バグダッドのガバナンスに関する政策アドバイザー、国家安全保障会議(NSC)での南西アジア問題の担当課長などを務め、ジョージWブッシュのイラク・アフガニスタンの安全保障補佐官を務めました。その後、ハーバードケネディスクールで教授を務め、今はエネルギーの地政学(Geopolitics of Energy)プロジェクトのダイレクターを務め、複数の研究プロジェクトを回しています。これだけの経験を若干46歳でしてきているのは、日本のように年功序列でないアメリカであったとしても、目を見張るような実績だと言えると思います。

 今週の月曜日、Geopolitics of Energyの授業で、Hess Corporationと呼ばれる石油・ガスへの投資を行うアメリカ企業の副社長兼企業戦略ヘッド(Head of Coporation Strategy)Colin Davies氏がゲストスピーカーとして話をしに来ました。ちょうど先週、授業の中で、学生6人一組のチームを組んで、架空の多国籍エネルギー企業の投資判断に関するゲームを行いました。これは今学期から始めた新しいゲームで、自分が多国籍エネルギー企業として新しい収益源を探しているという立場に置かれた際、イランとメキシコの石油プロジェクトの両方に投資をするか、あるいはどちらかだけに投資するか、またはいずれにも投資しないかの判断をするというゲームです。この背景には、メキシコのエネルギー関連の規制改革(これまではPEMEXと呼ばれる国営企業が独占していたメキシコの石油市場を、外国の企業にも開放した)や、7月のイランとP5+1との間の核合意と今後見込まれる経済制裁の解除が、背景としてあります。

 このゲストスピーカーを通じて、メガン・オサリバン教授は、このHess Corporationという企業のCEOに対する戦略アドバイザーも務めているということを知りました。石油・ガスの投資をする上で、収益に最も大きな影響を与えるのは原油価格・ガス価格であり、そのために政治的リスク(Political Risk)やマクロ経済のリスクなどを分析する必要があります。つまり、オサリバン教授は、自身の安全保障に関する政策アドバイザーとしての経験や学者としての知見を活かしながら、国の政治的リスクの分析やアドバイスを行っているということです。さらに、このアイルランドのメディアの記事が示していますが、アメリカ大統領選に出馬するジェブ・ブッシュ氏が大統領に選出された際には、政権の安全保障アドバイザーにメガン・オサリバン教授を採用しようと考えているとのことです。あまり詳細は本人から聞いたことはありませんが、彼女はジェブ・ブッシュ氏の選挙キャンペーンにも関与しているようです。

 このように大学教授という仕事以外に何足ものわらじを履いているので、いつも忙しそうなのですが、オサリバン教授はそうした様々な仕事に携わっていることを楽しんでいるように感じます。学生と接するのが好きで授業そのものも楽しんでいますし、新しい本の執筆も力を入れていますし、他にも、政策立案や大統領キャンペーン、企業の投資行動にも携わっています。アメリカと日本という国の文化の違い、女性と男性という違いもありますし、そもそもの知的能力の違いもあると思っていますが、オサリバン教授のようなキャリアの歩み方は、僕にとって理想的だなと感じています。つまり、エッジの効いた専門分野を確立し(彼女であれば、中東の安全保障、エネルギーの地政学)、その専門能力を基に、様々な人から声をかけてもらい、政府の政策決定や企業の意思決定、学術的なプロジェクトに携わっていくという生き方です。同じようにオックスフォード大学のような一流の大学で博士号を取ったような人は世の中にたくさんいると思うのですが、何が彼女を他の人たちと異なる次元においているかを考えたとき、それは、彼女の人間関係の構築力、コミュニケーション力、人から好かれる力なのではないかと感じています。僕自身、彼女のコースのアシスタントを務めるのは、かなりの分量の業務が発生し、他の授業との両立が大変だと思うことが多いのですが、それでも、オサリバン教授のためなら何とか貢献しよう、良いアウトプットを出そうと思わせる何かを持っているように感じます。それは、普段の会話で、最近調子はどうかと気遣ってくれる発言や、日本にも関心を持って色々と質問してくれること、ユーモアのある会話をすることなど、ちょっとした行動の積み重ねなのかなという気もしています。

 自分がこのようなキャリアを歩めるかというのは全く分かりませんし、そのためにはいくつもの壁を超えなくてはとは思いますし、そもそも年功序列で労働の流動性が低い日本でそれが可能なのかという疑問はありますが、自分の中での希望・ロールモデルとして、オサリバン教授のようなキャリアの歩み方を念頭に入れておきたいと感じました。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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