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パブリックセクターで働くこと

 MPA2のクラスメイトに、仲の良い韓国系アメリカ人の友人がいます。彼は韓国で生まれましたが、すぐにアメリカに移住し、テキサスで一番有名なテキサス大学オースティン校を卒業します。卒業後は、小学校の教師を務めていましたが、キャリアチェンジをするため、ケネディスクールとニューヨーク大学ロースクールのジョイントディグリーの学生をしています。テキサス出身ということもあり、彼の関心はエネルギーで、同じ授業をいくつか取っていたので仲良くなりました。また、彼は政治にも関心があり、"The Making a Politician"という授業や、"Running for Office and Managing Campaigns"という政治家になるための実践的な授業を取っています。これに限らず、彼は、教育や核不拡散など、公的な分野への関心が強く、パブリックセクターで働きたいという想いを根底に持っています。彼は、「お金を稼ぐのは誰にでもできるが、公のために尽くすことは誰にもできることではない」という考えを持っています。しかし、彼は、ケネディスクールを卒業後、テキサス州に戻り、アメリカでも最大手の銀行でインベストメントバンカーとして働くことが決まっています。僕が彼に、将来的に連邦政府で働いたり、出馬して政治家になる予定はないのかと聞いたところ、彼の回答はNOでした。彼はまだ20代後半ですが、23歳の若さで結婚していて、家族がいます。奥さんがテキサス州に住むことを希望しているため、ワシントンDCに引っ越す必要のある連邦政府での勤務は難しいとのこと。また、政治家についても、彼曰く、テキサス州は依然として白人中心の社会で、アジア系アメリカ人の彼が選挙に出馬して勝つことは難しいとのこと。さらに、彼は3年間の大学院生活で多額の学生ローンを背負っているため、給与の低い連邦政府・政治家の仕事ではなく、インベストメントバンカーとしてお金を稼ぐ道を選んだとのことでした。他にも、仲の良いアメリカ人で、連邦準備銀行(FRB)で金融政策や規制行政に携わりたいと思っているものの、ケネディスクール卒業後は、ローンの返却を最優先に考えるため、コンサルティング会社や投資銀行への就職を考えているという学生もいます。

 長くなってしまいましたが、何が言いたかったかというと、アメリカでは、金銭面や人種、地理的な理由などから、連邦政府や政治家などのパブリックセクターで働くことを希望していても、その選択肢を取れる人は必ずしも多くないということです。裏返して言うと、これらのパブリックセクターで働くことは、ある意味特権的で、貴重なことなのではないかということです。日本では、政治家や官僚を含め、パブリックセクターで働くという選択肢はあまり人気が高いとは言えません。金銭的な理由や、スキャンダルなどを含む社会的評価の低下などが理由にあると思います。僕自身、ケネディスクールに来た当初は、様々なキャリアの選択肢に触れる中で、民間企業に行きたいという想いを強くするだろうと思っていました。昨年11月の記事でも、民間企業やNPO、社会起業などもキャリアの選択肢として面白いと書いています。しかし、最近では、こうしたアメリカ人の友人たちと話すにつれ、、当初の想いとは裏腹に、パブリックセクターでキャリアを積めること自体が恵まれているともいえるし、そのことをもっと誇りに思っていいのではないかと思うようになりました。それらの友人たちにキャリアの方向性について色々と悩むこともあると伝えると、「どうして悩む必要があるのか。パブリックセクターで働ける環境があるのであれば、それを続けるべき。」という回答が返ってきます。ただ、これらの考察は、僕がケネディスクールという特殊な環境にいて、公共政策に関心のある学生に囲まれているため、かなり偏っているとも思います。おそらく、東海岸と西海岸でも違いがあって、シリコンバレーのある西海岸では、ベンチャー企業やテクノロジー系企業で働くことがよりクールなんだと思います。いずれにせよ、来年5月まで残り7か月程度、色々な友人たちと話したり教授とも相談しながら、自分のキャリアの方向性を定めていきたいと思っています。
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[C68] 大学側はどう思っているのでしょう?

こんにちは。コメントは初めてですが、いつも興味深い洞察に学ばさせてもらっています。
韓国系アメリカ人のご友人の話は珍しいケースではないのではないかと察しましたが、大学側はこれについてどう思っているんでしょう?パブリックマインドを持ったリーダーが必ずしもパブリックセクターにいなければならないことはないのでしょうけど、経済的な理由でインベストメントバンカーを選択するというのは大学の期待する結果とは違いますよね。
経済的リターンを見込めるMBAならまだしも、HKSのような場所でMPAを取得できるのは本当に経済的に恵まれている一部の人でしょう。学校としてはそれを承知で、公費や奨学金を取れる有望な学生にだけ来てもらえばよいということなんでしょうか。
  • 2015-11-17 11:14
  • Kiyo
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[C69] Re: 大学側はどう思っているのでしょう?

コメントありがとうございます。就職については、アメリカ人の学生とインターナショナルな学生で傾向は違うかなと思っています。アメリカ人の学生は、ローン返却のために給与の高い民間企業に就職、インターナショナルな学生は、国からの奨学金などをもらい来ている学生が多いので、パブリックセクターに戻っていく割合が多いように感じます。大学側としては、卒業生にインベストメントバンカーになってもらいたいとは思っていないと思うので、おっしゃるとおり、大学の期待する結果とは異なりますよね。ただ、アメリカは、日本と異なり、民間企業で実績を積んだ人が連邦政府のハイレベルなポジションに雇われるケースも多いので(例:ポールソン元財務長官はゴールドマンサックス出身)、卒業生がすぐにはパブリックセクターに行かなくても、キャリアのいずれかのタイミングでパブリックセクターに行って活躍してもらえれば良いと考えている可能性もあります。そもそもパブリックセクターの仕事は給与も民間企業より低いですし、中々魅力的に映らないというのは、どの国も抱えている問題なんだと思いました。
  • 2015-11-26 07:18
  • tak
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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