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コースアシスタントを通じて得られた気づき

 以下、3ヶ月間のコースアシスタントの経験を通じて得られた気づきについて、書いておきたいと思います。

1.若くして抜擢され、活躍する人の特徴
 これまでも何回か書いてきたのですが(過去の記事1過去の記事2)、3ヶ月間オサリバン教授と働いてみて最も印象に残っているのは、彼女の人柄の素晴らしさです。40代半ばにしてハーバードの教授を務め、大統領のアドバイザーを務めた経験を持つ彼女が、若くして抜擢され、活躍してきた理由に、極めて高いレベルで「スマートさ」と「人柄」の両方を兼ね備えていることが挙げられると思いました。

 「人柄」については、(1)どんな相手に対しても敬意を持って接する(2)感謝の言葉をきちんと伝える(3)柔らかい雰囲気を作る、という3つに集約されるかと思っています。具体例を挙げると、コースアシスタントのした作業に対して必ず感謝の気持ちを伝える、授業が始まる前にコースアシスタントに対して「調子はどう?」と毎回声がけをする、ゲストスピーカーが来た際にはその人の素晴らしさを紹介し、その人が気持ち良く話ができる環境を作る、学生60人の全員のバックグラウンドと名前を覚える、英語が苦手な学生や要領を得ない学生が発言している際も柔らかい表情で最後までしっかりと話を聞く、場の雰囲気が固くなった際にはユーモアを使って空気を和らげる、という点が上げられます。これまでの自分の職場を振り返ると、大変失礼ながら、この真逆のタイプの人もいたので(上司にはおべっかを使い部下に厳しく当たる、感謝の言葉を示さない、常に怖い顔をしている)、より一層際立ってオサリバン教授の良さを感じました。

 また、自分より若い人への接し方として、機会をたくさん与え、最後は自分が責任を取るという姿勢を貫くことが挙げられます。例えば、コースアシスタントの僕に対し、ゲームの説明をしたり結果発表をするなどの機会をたくさん与えてくれ、僕が説明に手間取った時などには、横から助け舟を出してくれました。これに限らず、若い人にたくさんの成長の機会を与えてくれる彼女の姿勢に感銘を受けました。

 「スマートさ」については、(1)分かりやすいフレームワークに落とし込む(2)あらゆるトピックに精通している、の2点が特筆すべきことかと思いました。(1)については、複雑な国際関係論の世界を分析する切れ味のあるフレームワークを提示し、それに基づいて議論を進めることです。例えば、授業で扱う内容を紹介する際には、「外交政策の目的としてのエネルギー(Energy as an end to foreign policy)」と「国家のパワーの手段としてのエネルギー(Energy as a means of national power)」という切り口、ロシアの北極での脅威を分析する際には、「Capability + Intention = Threat」というフレームワーク、アメリカが中東への関与を続けるかという議論の際には、「non-energy interest」と「energy interest」という視点から分析する、などです。こうした切れ味の鋭いフレームワークを提示し、複雑な国際関係論の事象を分析する点が、彼女をスマートだと思わせる理由の一つだと思いました。(2)については、中東からアジア、南米、アフリカなど世界各地の出来事、安全保障から経済、政治まで、幅広くあらゆるトピックをカバーしているのが彼女の強みだと思いました。今年のエネルギーの地政学の授業は、ベネズエラからナイジェリア、南スーダン、中国、アゼルバイジャン、リトアニアまで、あらゆる国の学生が取っていました。僕が驚いたのは、彼らが自国のエネルギー事情や政治について話をした際に、どの国の話題であっても、基礎的な知識を持っていて、的確な返答をしていたことです。彼女の知的好奇心の豊富さや、様々な人脈との意見交換、日頃からニュースを幅広くフォローするとう地道な積み重ねがなせる術なのかと思いました。

 「スマートさ」や「人柄」のどちらか一方を持っている人は世界にたくさんいると思いますが、この両方を極めて高いレベルで持っている人は珍しく、だからこそ、オサリバン教授は若くして政府の高いポジションや面白い仕事に抜擢されてきたのではないかと感じました。

2.日本人として国際的なチームで価値を出すこと
 今回、ティーチング・チームの中で唯一の日本人として、単純に英語力の面でもハンデを抱えていましたし、日本人学生でコースアシスタントを務めたというモデルケースも多くないので、かなり不安がありました。しかし、最終的には、日本人でも十分に英語ネイティブの中でやっていける、むしろ日本人だからこそ価値を出せる分野があるという想いを強くしました。以前、IAEAの天野事務局長が考える日本人の3つの資質(過去の記事)、つまり、①他人の話を聞くこと、②ルールを尊重すること、③勤勉さ、について書きました。これらの点と一部重複する点がありますが、僕が今回感じた、日本人だからこそ価値を出せる点について、以下述べたいと思います。

 1点目は、約束をきちんと守るということです。もう一人のコースアシスタントだったアメリカ人学生は、明るい性格で、チームワークを大事にする素晴らしいパートナーだったのですが、他方で、「俺がやるよ」とか「今晩中にはやるよ」と威勢良く言うものの、やるのを忘れていたり、締切を守らなかったりということがありました。僕は、自分でこの時間までにやるといった期限は必ず守る、自分が担当した作業についてはどんなことがあっても必ずやり切る、という姿勢を徹底しました。おそらくですが、オサリバン教授は、僕に対し、「やると言ったことは必ずやり遂げる」という印象を持ったのではないかと思います。自分の言ったことに責任を持ち、締切を守り、きちんとやり遂げるという日本人の資質は、国際的なチームの中で強みになると思いました。

 2点目は、地味な作業を確実にこなすことです。今回の例で言えば、オイル投資ゲームという、学期中を通じて架空のオイルとキャッシュを基に自分の資産を増やしていくというゲームをしました。学生60人が二週間に一度、石油の売買に関する投資行動を行うのを受け、その結果をエクセルで整理し、二週間おきに学生にメールをする、というかなり地味な作業が発生しました。僕は、この作業を学期中を通じて、地道にこなし、最後の授業ではその結果をプレゼンしました。他にも、学生の課題の提出のために、Dropboxというツールを使って共有フォルダを作成し、学生に対して課題提出方法について指示を出す、という作業があり、これも僕が責任を持って行いました。このような地道な作業を嫌がらず着実にこなしたことは、オサリバン教授をはじめチームのメンバーの信頼を獲得する上で役立ったと思っています。

 3点目は、逆説的ですが、英語があまり上手でなく、普段は大人しい日本人だからこそ、周りの人に勇気を与えられるということも再確認しました。僕自身、自己主張の激しいケネディスクールの学生に囲まれると、口数は多くなく、大人しい部類に入りますが、そんな僕が授業中にプレゼンをしたり、コースアシスタントとして授業の運営に積極的に関わっているのを見て、勇気づけられた学生がいるのではないかと思っています。実際、他のクラスでは静かな、英語の苦手なインターナショナルな学生が、このクラスでは積極的に発言しているのを見ましたが、その理由の一つに、アメリカ人学生のようには流暢に話せない僕が一生懸命クラスでプレゼンをしていたのが挙げられるのではないかと思います。これは、先学期取ったリーダーシップの授業での学び(過去の記事)とも重複するのですが、日本人というアメリカ人とは対極の文化を持つ国の人が勇気を出して頑張っている姿を見せることで、周囲の人の士気を高め、ポジティブな連鎖反応を生むことができるのではないかと思いました。
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[C72]

オサリバン教授のコースアシスタントの経験を通じて一皮剥けましたね。達成感が大きな自信になると思います。
  • 2015-12-06 18:58
  • otto
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プロフィール

tak

Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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