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東アジアの安全保障の授業のフィードバック

 今学期一番好きだった授業が、Negotiating US Interests in an Evolving Asia Pacificという、東アジアの安全保障の授業です。ケネディスクールでこれまで13の授業を取ってきましたが、この授業ほど、講師が一人一人の学生の能力開発にコミットしてくれているものはありませんでした。学期の始めに、3つの能力開発のゴールというのを設定し、講師に提出しました。これに対し、今日、講師のJohn Park先生から、20分ほど、フィードバックを受けました。

 僕が書いた3つの能力開発のゴールは、①外交政策に関する戦略的な分析能力を身につける、②効果的なコミュニケーション能力を身につける、③東アジアとその中における日本の役割に関する知識を身につける、の3点でした。まずは、僕自身がこれらの3つのゴールについてどう思うか感想を聞かれたので、以下のように答えました。

 ①については、授業中に習った複数のフレームワーク(世の中にまかり通っている神話や誤解を修正するDRUフレームワーク、外部の視点から特定の国の外交政策を分析するTOWSフレームワーク、内部の視点から国の外交政策を分析するAGMOフレームワークなど)を、クラスのサイトに毎回の授業の前と後に繰り返し適用し、投稿することで、これらのフレームワークを自分の中に内製化することができました。他に、僕が有効だと感じたのは、Red Team Exerciseと呼ばれる、交渉の相手国の立場に身を置いて、彼らであればどのような戦略を立てるか、行動に出るかを分析する手法です。学期中を通じて、北朝鮮の非核化やTPPへの中国の参入など、4つのシミュレーションを行いましたが、そのどれにおいても、このRed Team Exerciseを行うことで、一見非合理的に見える彼らの政策も、彼らの歴史・置かれている環境から考えれば、合理的なものなのだと気づくことができました。

 ②については、4回のポリシーメモの課題や、22人という小さなクラスだったからこそ発言の機会が多かったこともあり、Writingのスキル、Oralのスキルの両方とも、一定程度向上することができたと思います。

 ③については、授業でナイ・アーミテージレポート(Nye-Armitage Report)を取り上げて、いかにアメリカと日本の二国間の関係がアジアの中でも特別なものにあるのか、アメリカにとっては日本はアジア地域で極めて重要な同盟国であるか、というのを学びました。TPPなどの経済、東シナ海・南シナ海や北朝鮮問題などの安全保障の両方の分野において、日本が今後アジアで果たすべき役割は極めて大きい、アメリカからの期待も大きいということを認識することができました。別の問題として強く印象に残っているのは、アジアにおける歴史問題の位置づけです。この授業で一番ショッキングだったのは、ある論文が、アジアで欧州でのNATOのような安全保障に関する共同体ができない理由の一つに、日本の戦時中の負の遺産がいまだに多くのアジアの国に残っており、それがアジアでの共同体設立の足かせの一つになっているということを主張していた点です。僕自身、恥ずかしながら、日本の歴史問題については勉強不足で、この場で語るほどの内容は持っていないのですが、今後、日本が建設的な役割をアジアで果たして行く上で、この歴史問題をどう克服していくかを真剣に考えていく必要があると感じました。

 さて、John Park氏からのフィードバックで、いくつか印象に残っているものを書いておきたいと思います。ポジティブなものが2つ、今後改善すべき点が1つです。

 ポジティブな点の一つ目は、Naturally Structural Thinkerだと言われました。僕自身、このようなフィードバックをこれまで受けたことがなく、Structural Thinkingの意味するところが僕自身はっきりと分かっていないのですが、「ある問題を示されたときに、その周辺の文脈を考慮し、ビッグピクチャーを見た上で、何がコアな問題(the heart of the matter)かを見極めることができる」という意味のようです。日本語では、システムシンキングなどが近い概念として当たると思います。このありがたい指摘が本当に合っているかは分かりませんが、思い当たることがあるとすれば、僕は日本の大学・大学院で工学の教育を受けてきたこと、大学院の修士論文を書く作業などを通じて、そのような訓練を知らぬ間に受けてきたのかもしれないと思いました。もしこの指摘が本当だとすれば、今後も、Structural Thinkingができるという自分の強みを鍛え、活用していきたいと思いました。

 ポジティブな点の二つ目は、議論の中で、相手に対する敬意(Respect)を示しながら、それを自分の分析と組み合わすことができているという点です。John Park講師曰く、Respectfulなマインドは鍛えようと思っても鍛えることができず、育った環境に依るところが大きいとのこと。それが自然とできている点が優れていると言われました。他方、相手に対してRespectfulなだけでは、グループに貢献することはできず、Respectfulなマインドを持って、相手の見解(Viewpoint)を認知した上で、自分の分析を提示することが必要だとのことです。この指摘もこれまで受けたことがなかったので、相手に対してRespectを示しながら、きちんと自分の分析を示していく姿勢を今後も大切にしたいと思いました。

 今後改善すべき点については、議論の中で、控えめになってしまうことで、自分の価値を出す機会を失ってしまっていることがあるという点です。僕自身、これは留学してからずっと抱えている課題なのですが、何か発言しよう、議論に貢献しようと頭の中で考えているうちに、話題が次に移ってしまい、発言する機会を失ってしまうということがよくあります。実際、ケネディスクールの学生は自己主張が強く、弁が立つ人が多いので、少し萎縮してしまうというのが本音です。意外にも、John Park講師自身も、過去に同じような経験をしてきたということです。彼のアドバイスは、僕の、一歩引いてビッグピクチャーを見られるという長所を活かして、「行われている議論の自分なりのサマリーを短く提示し、その上で自分の分析を提示する(Quickly offer the summary of the discussion and introduce your analysis)」ということでした。こうした一歩引いた立場からサマリーを提示し、自分の分析を加えるということは、必ずグループの役に立つということでした。今後、この点に意識しながら、グループの議論に貢献していきたいと思いました。


John Park講師が北朝鮮のエリートについて最近講演をしたビデオです。政策分析と医者の診断を比較している1分20秒から4分20秒あたりが面白いです。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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