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2015年秋学期の授業のまとめ

 ケネディスクールの受験を検討している人の参考になるかもしれないので、2015年秋学期に受講した授業の感想・評価を、以下に載せておきたいと思います。(過去の授業の感想・評価はこちら:2015年春学期2014年秋学期

1.国際システムにおける大国間の競争(IGA-116: Great Power Competition in the International System)
【講師】R. Nicholas Burns
【客観的コメント】
 アメリカや中国などの大国間の変わりゆく関係性に焦点を当てた国際関係論の授業。ニコラス・バーンズ教授は、ブッシュ政権・オバマ政権の両方の政権で国務次官を務めた人物。人気の高い授業で、受講に約500点のポイントが必要だった。学期を通じて、アメリカ、中国、ロシア、インド、ワイルドカード(回によってブラジルや日本、トルコなどを担当)のいずれかが割り振られ、それらの大国の視点を通じて授業中にコメントをすることが求められる。

【主観的コメント】
 国際関係論をこれまで体系的に勉強してこなかった自分にとっては、南シナ海・東シナ海問題、インド洋、シリア難民、ISISなどのテロリズム、イランの核ディール、気候変動、国際保健など、世界で最も重要な国際問題について一通り基礎知識を得ることができ、自分なりの意見を持つことができたのが大きな収穫だった。国際政治学者のアイケンベリーの著書が課題図書として知られ、彼の提唱するシステム・オペレーター(SystemOperator)という概念を学期を通じて学ぶ。バーンズ教授は、職業外交官としてトップに立った人物であり、相手の話を聞く姿勢やプレゼンテーションの仕方、ディスカッションのマネジメントの仕方など、彼の振舞いから学ぶ点もあった。他方、彼自身は学者ではないため、新しいコンセプトや国際関係論を学ぶためのフレームワークが体系的に得られるわけではないと感じた。また、アメリカの外交官であるため、世の中を見る見方はかなりアメリカ寄りであると感じた。(例:今後数十年間は、アメリカは世界で唯一のシステム・オペレーターとして、積極的に国際問題に関与していくべき。)
 期末試験は口述試験を行った。授業で扱ったトピックに関する質問が25問事前に配布され、その中からランダムに4問ほど出題される。この準備に向け、スタディグループを作って、授業で扱ったあらゆる国際問題のトピックについて自分なりの意見を整理したことは、自分にとって大きな学びになった。口述試験自体は、穏やかな雰囲気で、厳しく問いつめるという雰囲気は全くなかった。

2.発展するアジア大洋州におけるアメリカの国益の交渉(IGA-685: Negotiating U.S. Interests in an Evolving Asia Pacific)
【講師】John Park, Stephen Bosworth
【客観的コメント】
 ケネディスクールで唯一のアジアの国際関係に焦点を当てた授業。講師は、アメリカ国務省でフィリピン大使、北朝鮮特使などを務めたステファン・ボズワース教授と、北朝鮮専門家のジョン・パーク講師の2名。学期を通じて、4回のシミュレーション(北朝鮮の核問題、TPPへの中国の加入、在韓米軍基地の負担の分担、東シナ海での日中間の危機管理)を行う。受講者数は、フレッチャースクールなどのクロスレジスターや、ナショナル・セキュリティ・フェローも含め、22人。

【主観的コメント】
 学期の初めに、授業を通じて達成したい目的を3つ書き、学期の最後にその目的を達成できたかに関してフィードバックを受けることができた。また、ほぼ毎回の授業で、リーディングに関する意見をオンラインのサイトに投稿し、授業後には授業で得られた気づき・質問について投稿することが求められたが、それらのコメント全てを講師は読んでいた。ケネディスクールでこれまで受けてきた授業の中で、最も学生一人一人の成長に講師がコミットしてくれている授業だと感じた。
 内容面では、北朝鮮の核問題や南シナ海・東シナ海の問題など、これまで集中的に学習してこなかったアジアの安全保障問題について体系的に知識を得ることができた他、日本が今後アジアで果たすべき役割について深く考えを巡らせることができ、非常に勉強になった。クラスには、シンガポールや韓国、台湾の官僚・外交官、米国海軍の幹部候補などが集まり、彼らの発言からも学ぶ点が多かった。自分自身も、クラスで唯一の日本人として、ディスカッションに貢献できる場面も多かった。他にも、DRUフレームワーク(多くの人が誤解している認識を訂正し、真実を見極める)など、国際関係を分析する上で有用なフレームワークを教えられ、それを授業中の発言やオンラインのサイトへの投稿などで繰り返し適用することを求められた。結果的に、複雑な国際関係を分析するための一つの思考の枠組みが得られたと感じている。

3.グローバリゼーションの未来(ITF-225: The Future of Globalization: Issues, Actors, and Decisions)

【講師】Robert Lawrence, Lawrence Summers
【客観的コメント】
 元ハーバード大学学長で、オバマ政権で経済政策アドバイザーを務めたローレンス・サマーズ教授と、クリントン政権で経済政策アドバイザーを務めたロバート・ローレンス教授が二人で教えるグローバリゼーションの授業。学部生との合同の授業で、人数制限を設けなかったため、200名近くが入ることのできる大教室で授業が行われた。貿易、金融、グローバル問題(気候変動・保健)の3つのテーマに分け、両教授が講義をする形式で授業は進んだ。週二回の講義の他、セクションと呼ばれる20名弱のクラスが週一回行われ、講義内容の復習や、TPP等に関するシミュレーションを実施した。

【主観的コメント】
 大教室の講義が中心で、学生とのインタラクションは少なかったこと、また、学部生に合わせたレベルの基礎的な講義内容となっていることから、得られる知的刺激という観点からは、他のケネディスクールの授業より少ないと感じた。また、個人的には昨年度ロバート・ローレンス教授の貿易政策の授業(ITF110)を受講したため、学期の初めの3分の1の内容はそれと大きく重複していた。ローレンス・サマーズ教授も、大物になりすぎたためか、学生にとってアプローチしやすいという印象はなかった。
 他方、期末試験では、事前に50近い用語が与えられ、それらの中から無作為に選ばれる10の用語について説明することが求められるため、その準備をスタディグループを作って行ったことは、一通りの知識を定着させる上で役立ったと感じている。具体的には、グローバリゼーションのトリレンマ(国の主権を維持すること、経済を開放すること、地球規模課題を解決することの3つを同時に果たすことは困難)や、グローバリゼーションを推進することによる弊害(格差の拡大、スーパースター経済)、グローバリゼーションの歴史(ブレトンウッズ体制、ワシントンコンセンサス)などについて理解を深めることができた。

4.パブリック・ナラティブ(MLD-355M: Public Narrative: Self, Us, Now)

【講師】Marshall Ganz
【客観的コメント】
 オバマ大統領の選挙アドバイザーを務めたマーシャル・ガンツ講師による授業。聴衆とつながり、自分の推進したいプロジェクトに彼らを巻き込んでいくためのストーリーの作り方について、半期をかけて学んでいく。教育大学院との合同授業のため、合計120人程度が受講していた。15人のセクションに分けられ、一人TAがつき、互いにフィードバックを与えながら、それぞれのストーリーを完成させる。最後のセクションでは、全員が5分のストーリーを語り、ビデオで撮影がされる。

【主観的コメント】
 自分の過去の失敗をさらけ出し(Self)、聴衆との共通の体験を想起させ(Us)、今行動すべきことを訴える(Now)ことを通じて、聴衆を動員していくための手法を徹底的に学ぶことができた。このフレームワークのみが必ずしも唯一の解ではないのではないか、感情を表に出すことをしたがらない日本社会の中でどれだけ適用できるのかと疑問に思うこともあったが、この授業の中では、まずは徹底的にこのフレームワークを身につけることに注力した。受講学生の中には、壮絶な幼少期の体験を経ているような学生もいて、自分の過去の経験が小さく感じることもあった。最終的には、聴衆を動員するためのストーリーの作り方に関する一つの型を得ることができたと感じているが、これを自然に使いこなせるようになるには、今後のキャリアや日常生活の中で、継続的に使っていくことが必要だと感じた。また、自分の個人的経験をさらけ出すことになるので、セクションの中では強い連帯意識が生まれ、教育大学院の学生も含め、友人の輪が広がったという副次的な効果もあった。

5.エネルギーの地政学(IGA-412: The Geopolitics of Energy)
【講師】Meghan O'Sullivan
 2015年春学期の授業を受講し、2015年秋学期では、コースアシスタント(CA)を務めた。授業内容としては、昨年度同様、ロシアの天然ガスを武器として用いた外交、OPECが世界の原油市場に与える影響、中国のアフリカのエネルギー資源探求、アメリカのシェール革命を受けた後の中東関与など、エネルギーと地政学の関係性について様々なトピックを扱った。それに加え、今年度は、グループプロジェクトとして、学生からクリエイティブなゲームやシミュレーションを提案させ、その中から特に優れたものについて、最後の2回の授業で実際にそれらをプレイするという取組みを行った。(北極海を巡るロシア、ノルウェー、アメリカの攻防のシミュレーションと、アメリカ国内の原油プロジェクトの開発に関するボード・ゲームを行った。)

 CAを務める日本人学生はあまり多くないが、①教授との強いつながりができること②受講学生とも交流が深まること、③授業で使うスライドの作成や課題の採点などを通じて、授業内容の理解が深められること、④オサリバン教授に関して言えば、授業中に行うゲームの作成・管理やプレゼンなど多くの役割をCAに与えてくれ、成長する機会が多く得られることから、CAを務めることのメリットは大きいと感じた。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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