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一年半の学びの総括

 期末試験が終わり、旅行をして、ボストンに戻ってきました。いよいよ最後の学期を迎えるにあたり、授業選択を含め、どのように時間を過ごすべきか悩んでいるところです。そこで、これまでの一年半で学んだことを整理した上で、最後の学期の過ごし方を考えたいと思います。これまで学んできたことは、「エネルギー問題にどう向き合うか」、「世界の中で日本はどのような方向に進んでいくべきか」、「人・組織をどのように動かすか」の3点に集約されると思っています。

1.エネルギー問題にどう向き合うか

(1)エネルギー政策は国の経済・産業にダイレクトに影響を与えるもの。2011年の福島の原発停止が露呈したように、エネルギーが安定的に供給できなければ、電力コストが増大し、企業は国外に逃げていき、国の経済に負の影響を与えます。逆に、強固なエネルギー政策は、安定的かつ低コストの電力を供給し、企業活動を支え、国の経済成長に資するということです。

(2)エネルギーは外交・安全保障と密接に関係するもの。関係の仕方は、2種類あり、「外交の目的としてのエネルギー」と、「外交の手段としてのエネルギー」で、国内で資源の取れない日本は前者が当てはまります。日本は、安定的にエネルギーを供給するために、原油の取れる中東との関係強化や、ガスの取れるオーストラリアやロシアとの関係を構築していく必要があります。

(3)エネルギーに占める原油の果たす役割は今後数十年は引き続き重要であり続けること。これは、私たちの生活に不可欠な運輸部門において、原油に代わるエネルギー源がすぐには発展しないためです。もちろん、電気自動車や天然ガス自動車などが徐々に普及していくと思いますが、インフラ施設の制約、電池などの技術的制約から、ガソリン車がこれらの車にすぐに代替されることは起こらないと予測できます。

(4)エネルギーと地球環境問題は密接に関係していること。気候変動問題をいかに解決するかは、ケネディスクールのあらゆる授業で取り上げられ、市民社会の関心も強い問題です。今後数十年は、気候変動問題への高い貢献を見せながら、自国のエネルギーを供給するという課題に、日本のみならず、あらゆる国が直面することになります。


 日本は、気候変動問題でリーダーシップを発揮しながら、自国の産業・経済発展に資するエネルギー政策と、それを実現するための戦略的な外交を展開していく必要があると思います。特に、中東情勢が安定しない中、原油をいかに安定的に確保するか、また、ウクライナやシリア問題などで欧米諸国から批判を受けるロシアとの関係を含め、温室効果ガス削減にも資するブリッジのエネルギー源としての天然ガスをいかに確保するかが鍵になると思います。個人的には、アメリカやカナダ、メキシコなどの北米・中米とのエネルギー協力の強化を通じて、原油・ガスの安定的供給を高めていくことが必要だと感じています。加えて、世界各国、特にこれまで温室効果ガスの削減義務が課されていなかった途上国が、パリ合意に基づき、気候変動問題にも大きく貢献することが求められる中、それらの国々のエネルギー政策の立案を支援する必要性も大きくなると思います。2点目の「世界の中で日本はどのような方向に進んでいくべきか」にも関わりますが、日本は、自国の経験を活かしつつ、途上国、特に資源の取れない途上国のエネルギー政策に積極的に貢献していくことで、存在感を発揮していくべきではないかと思います。

【最後の学期で学びたいこと】
 これまで深堀してこなかった問題として、日本が原子力エネルギーにどう向き合うかを学びたいと思います。これについては、John Park講師とのインディペンデント・リサーチの形で、日本の原子力エネルギー政策が東アジアの安全保障に与える影響について研究する予定で、その結論も踏まえながら、自分なりの回答を導ければと思っています。また、Joseph Aldy教授のEnergy Policy Analysisという授業も取りたいと思っています。Joseph Aldy教授は、オバマ政権でエネルギー政策のアドバイザーとして仕えた経験がある他、国の気候変動政策が産業競争力に与える影響などをリサーチしています。この授業の下、気候変動問題への寄与と、安定的・低廉なエネルギー供給とを両立するような日本のエネルギー政策のあり方について、一歩深めて学びたいと考えています。他に、余裕があれば、Christine Russel講師のControversies in Climate, Energy, and the Media: Improving Public Communicationも取れたら取りたいと思っています。僕自身の経験上、エネルギー政策はメディアの影響を大きく受け、メディアは必ずしもエネルギー政策の難しい側面(経済性と環境、安全性をどう両立するかなど)を報道しきれていないと思っています。例えば、原子力に対する必要以上の不安をメディアが煽っているという側面も否めないと思います。エネルギー・環境政策とメディアとの関係性や、僕自身が将来メディアとどのように協力関係を築きながら政策を作っていくかのヒントが得られればと思っています。

2.世界の中で日本はどのような方向に進んでいくべきか

(1)国家のパワーは、経済力、軍事力、政治力、ソフトパワーの4つから構成されるが、アメリカは、それら4つのパワーを統合した総合力では今後数十年はナンバーワンであり続け、そのパワーを用いて、世界のシステム・オペレーターとして、民主主義や人権の保護といった価値を広め、自由貿易を推進し、紛争の解決に貢献していく考えであること。

(2)同時に、アメリカが上記(1)を実現するには、これまで以上に同盟国との連携強化が必要不可欠であること。中国やインドの台頭、ISISなどの非国家のアクターの影響力が大きくなる中、もはやアメリカ一国ではシステム・オペレーターの役割を担うことができず、同盟国に相応の負担を求めていくことになります。

(3)日本はアメリカにとって最も重要な同盟国であること。NATOを形成した欧州とは異なり、アメリカは、アジアにおいては、日本や韓国、オーストラリアなどの同盟国との二国間の関係構築(Hub&Spoke)を通じて、安全保障上の秩序を保とうとしています。ナイ・アーミテージレポートの発出などからも見られるように、それら同盟国の中でも、日本とアメリカの関係性は、絶対的・特権的なものであることを学びました。南シナ海や東シナ海での航海の自由(Freedom of Navigation)、北朝鮮の非核化の実現など、アメリカの東アジアにおける国益の実現のために、日本は最も信頼できるパートナーであり、これからもそうあり続けてほしいというのがアメリカの見方です。

(4)今後、世界は、自由貿易をはじめ国を開放することの経済的メリットを享受しながら、それに付随するグローバルな課題にどう対処していくかという問題に直面すること。自由貿易は、短期的に見れば勝者と敗者を国内に作るものの、長期的に見れば、世界全体にとって経済的にポジティブな影響を与えることを学びました。他方、国を開放することには、所得格差の拡大、気候変動の悪化、エボラなどの疫病の蔓延など、デメリットも付随することを学びました。グローバリゼーションに伴うメリットとデメリットをどうバランスさせるかが今後どの国も直面する課題になります。


 これらの学びを通じて、憲法の制約があり、軍事大国となることができない日本にとっては、経済力を軸に、アメリカの最も信頼できる同盟国として世界の課題に貢献していくという方向を目指すべきなのではないかと感じました。特に、貧困・格差の縮小、気候変動問題の解決、保健・医療問題の解決など、日本国内に知見のある、グローバルな問題に貢献していくことで、世界から尊敬される国を目指していくべきだと思いました。こうした取組を進めていくと同時に、外交面においては、日本は、特に中国と韓国との関係で、未だに残る歴史上の負の遺産を取り除き、建設的な関係を築く努力を進めていくことも必要だと思いました。

【最後の学期で学びたいこと】
 日本は経済力を基軸として国を作っていくべきだという想いを強くしたのですが、では実際に、日本が今後人口減少を迎える中、どのように経済成長を実現していくかをあまり勉強してこなかったと感じています。まずは、国際経済学者であるJeffrey Frankelの教えるThe Economics of International Financial Policyも取りたいと思っています。ケネディスクールに来てから、アルゼンチンやブラジルなどのラテンアメリカ諸国の低成長や、ギリシャの金融危機などの様々な事例を見るにつけ、マクロ経済政策が国の経済成長に与える影響の大きさを痛感しています。日本のアベノミクスにどのような経済理論の背景があるかについても、この授業を通じてきっちりと勉強したいと思っています。次に、David Keith教授が教えるTechnology and Policyを取りたいと思っています。これは今学期初めて開催されるコースですが、サイバー、バイオテクノロジー、人工知能(AI)、エネルギー・環境などの分野に焦点を当て、経済成長を実現するための政策を考えるというコースのようです。他に、Microeconomics of Competitivenessというビジネススクールとの共同の授業にも関心があります。これは、マイケル・ポーターの競争力のモデルを用いて、国が競争力を高めるために政府や企業が取るべき施策について、ケーススタディ形式で学んでいくものです。ただし、上記1のEnergy Policy Analysisと時間が重なっていることから、どちらの授業を取るか悩み中です。

3.人・組織をどのように動かすのか

(1)リーダーシップを発揮する上で、一歩引くこと(Holding Back)が大切であること。リーダーシップを発揮すると聞くと、どんどん自己主張をして、自分のやりたい方向に周りを導いていくというイメージが強いです。他方、適応型リーダーシップの授業では、リーダーシップを発揮することを、組織のメンバーに対して真の課題に気づかせ、それに直面させることと定義しています。一人で何もかもやってしまうのではなく、適切にメンバーに問題を返すことこそがリーダーシップを発揮する上での鍵だということです。また、会議などの場でも、発言を少しの間控え(Holding Back)、あまり発言していなかったメンバーの発言を促すことで、これまで見えていなかった見解(Hidden Perspective)が浮かび上がり、問題の解決につながることがあることを学びました。

(2)人に動いてもらうために、相手の感情に訴えることが大切であること。コミュニケーションの技法の授業では、論理だけで構成されたスピーチやプレゼンでは人の心は動かせず、最後は相手の感情にどれだけ響いたかが人を動かす上での鍵だという学びがありました。パブリック・ナラティブの授業では、さらに一歩踏み込んで、どのように相手の感情を動かすかについて、自分の弱みをさらけ出すことの重要性を学びました。自分の過去の恐れや、勇気を出して何かを克服した経験を共有することで、聴衆との間に感情のつながりを生むということです。日本では、自分の感情や過去の失敗を包み隠さずさらけ出すことはあまり見ませんが、実はこうした自分の弱い部分をさらけ出すことが相手に共感の感情を芽生えさせ人を動かすことにつながるという学びを得ることができました。


【最後の学期で学びたいこと】
 これまで習ったものとは少し違った形のリーダーシップの枠組み・考え方を学びたいと思っています。1月期の授業では、Noticing: A Leadership Challenge>とLobbying: Theory, Practice, and Simulationsという授業を取る予定です(色々と時間的な制約があり、元々取る予定だったPersuasionの授業(記事)は落とすことにしました。)Noticingでは、リーダーはなぜ重要な出来事・予兆に気づくことができないか、あるいは、気づいたとしてなぜそれを指摘することができないかという問題を学びます。組織にいると、日々の業務に忙殺され、重要な状況の変化に気づけないといったことが多いと感じることが多いので、それを克服するためのヒントが得られればと思っています。Lobbyingでは、アメリカのロビイストが議員や行政機関にどう働きかけ、実現したい政策・法案を通していくかの技術を学んでいきます。直接日本に戻ってから活きる知見が得られるか分かりませんが、Lobbyistという意思決定者のアウトサイダーがどのように影響力を行使して、関係者を説得していくかのプロセスを学ぶことで、普段の業務に間接的に活かせるヒントが得られるのではないかと期待しています。また、春学期には、BPでダイバーシティ・マネジメントを指揮していたPatricia Bellinger講師が教えるThe Art of Leading in a Diverse World: Skills, Insights, and Best Practicesという授業も面白そうだと思っています。今後、日本社会では、女性の活用、一度定年退職した高齢者の活用、外国人の活用など、ダイバーシティのある人たちにいかに気持ちよく働いてもらい、そうした人たちの力を最大限引き出すかが鍵となるのではないかと思っています。この授業を通じて、そのためのヒントを得られればと思っています。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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