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ジャパントレック2016を通じて学んだこと

 ケネディスクールのジャパントレックが無事に終わりました。3月13〜20日まで、55人の学生を連れて、東京では安倍総理、遠藤五輪・パラリンピック担当大臣、鎌田華乃子さんら女性リーダー、社会起業家、トヨタ、JR東日本、7分間の奇跡で有名なテッセイ、海外大学への進学をサポートするためベネッセコーポレーションが運営する塾ルートHの高校生、福島では東京電力、松本楢葉町長、開沼博先生らと面談し、京都では寺・神社をはじめとする歴史的名所の観光を行いました。以下、ジャパントレックの企画・引率を通じて得られた学びを、忘れないうちに記録しておきたいと思います。

1.企画・運営におけるリーダーシップ
 日本で実際に引率をしてくれた7名、引率には参加しなかったものの準備に携わってくれた2名を含め、合計9名の日本人学生でジャパントレックの企画をしました。僕は昨年もジャパントレックの企画・引率に関与したので、共同代表として、企画全体を見る立場につきました。リーダーシップの授業で得られた学びをなるべく活用するように心がけました。まず、自分が全てをやってしまうのではなく、メンバーそれぞれが問題を自分のこととして捉え、積極的に関与するような状態を作ることを目指しました。具体的には、昨年のトレックの経験から、一人に作業が集中しないよう、会計・コミュニケーション・ロジ・企画など、主要な機能ごとに担当のメンバーを決めて、それぞれにリードをしてもらうように心がけました。今回は意欲のあるメンバーにも恵まれ、それぞれがジャパントレックを成功させるべく、責任を持って自分の担当の仕事をやり遂げるとともに、参加者の満足度向上につながるような提案を積極的にしてくれました。また、毎回のミーティングでは、大人しい人も発言ができるような包含的(inclusive)な雰囲気を作ること、隠れた見解(Hidden Perspective)を浮き上がらせるような場作りを心がけました。そのために、例えば、自分が話したいことがあっても敢えて話さないで一歩引いてみたり、あるいは敢えて過激な意見を議論の場に投じて皆のリアクションを促すようなことをしました。

 こうしたジャパントレックの企画は、組織における役職など関係なく、皆が「学生」というフラットな立場で運営に携わることになります。また、仕事ではないので、金銭的な報酬がない中、互いをモチベートしながら企画を進めていくことが必要になります。社会人生活を一旦離れ、留学して学生に戻ることのメリットの一つに、形式的な権威(Formal Authority)のない中で、周りのメンバーと協力し、信頼関係を築きながら、物事を進めていく経験ができることが挙げられると思いました。自分の日本での大学生活を振返ってみても、一番役に立ったと思うのは、全員がフラットな関係の中で行った学生団体での活動・企画だったと思います。そうした経験を通じて、周りの人とどう協力して物事を進めていくかの成功体験・失敗体験を積むことができ、それが社会人になってからも活きていると感じます。ケネディスクール卒業後に組織に戻ってからは、民間企業や他の政府機関と連携しながら企画を進めていくことがますます求められていくと思うので、こうした経験を留学中に積めたことは大きな財産になったと思います。

2.日本の相対的に優れている点・改善すべき点

 ジャパントレックを通じて、日本が他国と比べて相対的に優れている点、逆に改善していくべき点が浮かび上がってきました。優れていると感じた点は、人々の謙虚さ・相手を尊敬する姿勢です。例えば、松本楢葉町長を含め多くの訪問先の方々が、バスで参加者が次の目的地に向かうときに、最後まで手を振り続けて見送ってくれたことに、外国人参加者は、「こうした光景は他の国では見たことがない」と感嘆していました。これは、新幹線の清掃を手がけるテッセイのスタッフが、新幹線がホームに到着するときにお辞儀をすることにも象徴されていました。安倍総理との面談も実現しましたが、総理は写真撮影の後、一人一人の参加者と握手を交わし、これにも多くの参加者は、「一国の総理が学生と会う時間を設けてくれただけでなく、一人ずつ握手を交わしたのは驚くべきことだ」と述べていました。ミシュラン掲載の寿司職人である石井さんの元で寿司作り体験をした際も、石井さんが目の前のお客さん一人一人の手の大きさまでも考慮し、お客さんに喜んでもらうことを第一に考え、気持ちを込めて寿司を作るという話をしたことにも、多くの参加者は感動していました。トレックを通じ、こうした他者を尊敬する心、礼を尽くす気持ち、目の前の一人一人を大切にする姿勢というのは、外国人を感動させるものであり、日本人がもっと自信を持つべき慣習だと気づきました。

 他方、日本が改善すべき、アメリカなど他国から学べる点として感じたのは、自分の意見を堂々と主張すること、おかしいと思ったことに声をあげていくことです。女性のパネルでは、ケネディスクールの卒業生でもある鎌田華乃子さんの行っているコミュニティ・オーガナイジングの活動の紹介がありました。鎌田さんは、女性がおかしいと思ったことを声に出すことを助けるため、「ちゃぶ台返しアクション」というイベントを開催しています。こうした取組を通じて、日本で女性が物事を言いづらいと感じたり、組織内で不満を溜めていく状況を改善していきたいという想いが背景にあります。日本では、特に自分より地位・役職が高い人や、年上の人に対して、反対意見を述べたり、おかしいと思ったことを質問することがはばかれる文化が残っています。外国人、特にアメリカ人が優れていると感じるのは、相手が名誉ある教授であったり、自分の上司であっても、自分の意見をはっきりと主張し、反対意見を持っている場合はきちんとそれを伝えるという点です。さらに、その言い方も、日本人がイメージとして持っている「アメリカ人は直線的に物を言う」のとは異なり、相手を傷つけないように配慮したものになっていると僕は感じています。例えば、「それはいいアイディアだけど、こういう考えもあるよね。」といった言い方をします。今回のトレックでも、あらゆるセッションにおいて、相手が地位の高い人であろうとなかろうと、積極的に自分の意見を述べ、疑問に思ったことを投げかける外国人参加者の姿勢を見て、日本と外国では大きな差がついていると感じました。

 今回のトレックの重要なテーマの一つであった女性の社会進出や、それを妨げている勤労時間の過剰なまでの長さなどは、こうした年上の人や地位の高い人に対しても、きちんと意見を伝え、おかしいと思ったことに疑問を呈する文化が根付いていくことで、少しずつ改善されるのではないかと感じました。日本人には、目上の人を敬うあまり、相手を傷つけまいとして自分の意見をきちんと伝えられないという傾向があるのではないかと思います。僕自身も年上の人や目上の人に対してNOと言うことができず、苦労をしてきました。日本の良さである相手を敬う気持ちを持ち続けながらも、きちんと自分の意見を伝え、疑問を呈することを今後の課題にしていきたいと思いました。

Meeting with PM Abe
安倍総理との面談

Meeting with Mayor Matsumoto
松本楢葉町長との面談

Meeting with High School Students at Route H
ルートHの高校生との面談

Meeting with JR/Tessei
JR東日本・テッセイとの面談

Sushi Demonstration of Mr. Ishii
寿司職人・石井さんのデモンストレーション


テレビ朝日の夕方のニュース番組で6分ほどの特集として放送されました
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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