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2016年春学期の授業のまとめ

 2016年春学期に受けた授業4つと、一月期に受けた2つの授業の評価・感想を、載せておきたいと思います。春学期は、授業を3つのフルタームの授業と1つの半タームの授業に絞ったので、それぞれの授業に時間をしっかりと割くことができ、その分満足度も高かったように感じます。参考までに、過去の授業評価はこちら。(2014年秋学期2015年春学期2015年秋学期

1.気付く力(Noticing: A Leadership Challenge)

【講師】Max Bazerman
【内容】ハーバードビジネススクールにも籍を置くマックス・ベイザーマン教授による行動心理学・行動経済学の授業。1月期の一週目に5日間だけ行われる。ケネディスクールや教育大学院を中心に、全部で70人ほどの学生が受講していた。私自身はこの分野の前提知識がなかったが、Noticingという教授の著書に基づいて授業中のディスカッションが進められていくため、得られる知識・テイクアウェイが明確で、多くの学びがあった。例えば、チャレンジャー号の爆破事故をケースとして取り上げた回には、未然に防ぐことができたかもしれない危機的な事故を防ぐためには、組織の構成員が問題点に気づき、声を上げていくような組織文化を作ることが重要だという学びが得られた。成績評価の大半を占めるグループプロジェクトでは、Noticingの概念を活用して、仮想のクライアントに提言を行う。私は、UAEの原子力安全規制機関に対し、原子力関連の事故を防ぐためにどのような組織形態・文化を採用する必要があるか等の提案を行った。Noticingの考え方、特に、問題点や違和感に気付いた際にそれを積極的に指摘していく文化の醸成は、日本の組織にも取り入れていく必要があるのではないかと感じた。行動心理学・行動経済学の分野にあまり触れたことがないものの、この分野について一通りの知識を知っておきたいという方には、非常にコストパフォーマンスの高い授業だと思う。

2.競争力の政策(Policies for Competitiveness)
【講師】Fadi Farra
【内容】OECDでコンサルタントを務めた講師による競争力政策の授業。1月期の二週目に5日間だけ行われる。海外からの投資を誘致する政策、税政策、イノベーション政策、人材育成政策等のテーマごとに、教授の講義と学生間のディスカッションという形で授業が進行する。成績評価は、最終日に発表するグループプロジェクトが50%、授業参加が残りの50%を占める。今年度は、6人のチームごとに、ポーランドの競争力を高めるための政策について提案をまとめ、最終日には、ポーランドの元財務大臣にプレゼンを行った。教授は大変人柄が良く頭の切れる方であるものの、アカデミックとしてもポリシーメーカーとしてもやや中途半端なキャリアで、今後の政策立案に役立つ体系立った理論や具体的なテイクアウェイが得られたかという点では、少し物足りなかった。最終日の発表を除いて授業時間外に取られる時間も少ないため、0.5単位を効率よく取りたいという方には、オススメの授業である。

3.気候、エネルギー、メディアの対立(Controversies in Climate, Energy, and the Media: Improving Public Communication)
【講師】Christine Russell
【内容】ワシントンポスト等でジャーナリストを務めたクリスティーン・ラッセル教授による、メディアとエネルギー・気候変動の関係性に関して学ぶ半期の授業。ソーシャルメディアや、気候変動や北極等の特定のトピックに特化したメディアの台頭、著名人(ローマ教皇、オバマ大統領、レオナルド・ディカプリオ)のメディア露出が世論に与えた影響、台風や灌漑等の異常気象に関するメディアのカバレッジ等のトピックごとに、学生間のディスカッションを中心に授業が進行する。今年度は例年より受講学生が少なく、全部で15人ほど。ニーマンフェロー等のジャーナリストも授業を聴講していた。教授の優しい人柄のため、アットホームな雰囲気の中、ディスカッションに参加しやすかった。学期中を通じて、コースのために設けられたブログへの投稿を4回する必要があった他、異常気象、原子力・再エネ、北極の3つのテーマについてそれぞれライティングの課題が出された。全体的に緩い雰囲気で授業が進められていくので、きっちりとしたテイクアウェイを求めている人には物足りない授業かもしれない。個人的には、エネルギー・気候変動問題に対するジャーナリストの視点が得られたことや、アメリカのメディアの層の厚さを学ぶことができ、満足している。

4.エネルギー政策分析(Energy Policy Analysis)
【講師】Joseph Aldy
【内容】オバマ政権で環境・エネルギー政策のアドバイザーを務めたジョゼフ・アルディ教授による、エネルギー政策の定量的分析手法に主眼を置いた授業。受講学生は全部で20人強で、ケネディスクールの学生は7人、他はハーバードの工学系博士課程やMITの学生だった。費用便益分析や、割引率の分析結果に与える影響、炭素の社会的費用、キャップ&トレードや炭素税等の気候変動政策といったトピックごとに、関連の研究論文がリーディングとして与えられ、授業で教授がそれらに解説を加えていく。他にも、OPECゲームや京都議定書エクササイズが行われた。リーディングは必ずしも全部読む必要はないので、負担は決して大きくない。私は、可能な限り日本の事例を紹介する等、授業のディスカッションに貢献するよう努めた。授業の最後の5回は学生による最終ペーパーの骨子の発表を行う。私は、原子力発電所の稼働に関する費用便益分析を行い、教授・TAのオフィスアワーも含め、有用なフィードバックが得られた。ややテイクアウェイがふわふわしていたIGA-410(Energy Policy)と比べ、定量的手法に関する理解が一気に深まり、非常に満足している。

5.国際金融政策の経済学(The Economics of International Financial Policy)
【講師】Jeffrey Frankel
【内容】国際金融政策について、教科書を元に丁寧に解説をしていく授業。日本の大学以降触れていなかったマクロ経済学の理論についてアップデートしたいと思い、受講を決意した。授業は、期待していた以上に満足度の高いものだった。まず、教授自身が教科書の執筆者であるため、説明が非常にクリアで一貫していた。過去のフィードバックを踏まえてか、教授は意識して授業時間の多くを質疑応答に割いており、非常に丁寧だと感じた。また、理論のみならず、実際の世界で起きたことを引用しながら解説をするので、理論と実践の結びつきが得られやすかった。(例えば、アベノミクスや中国の為替政策、アメリカFRBの金融政策、ラテンアメリカ諸国のデフォルト等)さらに、学期を通じて計7回あるプロブレムセットを解く過程を通じて、授業中に習った理論に関する理解を定着させることができた。本授業を受講して、為替と経常収支の関係性や、外貨準備高と利子率の関係性、金融政策と財政政策の有効性等を体系的に学ぶことができ、国際経済に関するニュースへの理解が一気に高まったと感じている。

6.成人の発達(Adult Development)

【講師】Robert Kegan
【内容】ハーバード教育大学院のロバート・キーガン教授による発達心理学の授業。週一回の大教室での講義と、週一回のTAによる18人程度の少人数のセクションからなる。前年度の春学期にAdaptive Leadershipの概念について学ぶExercising Leadershipの授業を取り、多くの学びがあったことから、その理論的バックグラウンドになっているキーガン教授の発達心理学について理解を深めたいと思い、受講を決めた。ケネディスクールからも多くの学生がクロスレジスターしていた。キーガン教授の重要な研究成果は、人間は成人になってからも発達をし続けること、仕事や結婚、子育て等の人生におけるチャレンジが発達を促すこと、今まで見えなかったものが見えるようになる過程(主体から客体への移行)が発達であること、人間の発達は5段階に分かれ、多くの成人は他者からの評価・期待により自身の価値観が形成される第3段階と、価値観・理論を自ら構築できる第4段階の間に位置すること等が挙げられる。大教室での講義についても、一方的な講義ではなく、主体・客体インタビューと呼ばれるペアワークを行ったり、免疫マップと呼ばれるマップを共同で作成する等、学生を飽きさせないような工夫をしていた。世の中に対する新たな視点が得られたという観点で、非常に満足度の高いコース。残念ながら、キーガン教授の講義は今年度が最後。
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  • 2016-05-18 12:14
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プロフィール

tak

Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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