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新渡戸国際塾スタート!

 新渡戸国際塾という国際文化会館の主催するプログラムがあり、その第10期生として参加することになりました。元々はボストン留学時代の友人に紹介してもらったもので、弁護士や映画監督、NPO理事、コンサル、官僚など多様なメンバーが16人集まっています。最終年度だったため、例年より倍率が高かったようです(3〜4倍)。留学時代に自分の視野を目一杯広げることができたと思うのですが、帰国後は日々の業務にどっぷりと浸かっていて、一歩引いた視点から自分の仕事を振り返る時間が減っていることや、他業種の人たちと交流する機会が減ってきていることに問題意識を持っていました。今後12月までの半年間、この多様なメンバーと、二週間に一度程度、民主主義や伝統芸能、日中関係など、幅広いテーマを議論していくことが楽しみです。

 第一回は、渋沢栄一氏の玄孫(孫の孫)に当たる渋澤健さんが講師。テーマは「ステークホルダー資本主義」。得られた気づきがいくつもあったので、記録しておきたいと思います。

【渋沢健さんの講義の概要】
・渋沢栄一は、日本で初めての民間銀行である第一国立銀行を設立。生涯を通じて600の社会事業に関わった。道徳経済合一説を唱え、その思想は「論語と算盤(そろばん)」という本に記されている。
・渋沢栄一の資本主義の原点は、未来に向かって成長性のある資金を循環させること。(=銀行は大きな河のようなものだ。)
・論語と算盤は、正しい道理の富でなければその富は完全に永続できない、幸福を独り占めしているとその幸福は継続されないといった、サステイナビリティ(持続性)やインクルージョン(包括性)の考え方と同じ。
・日本近代社会は30年ごとの周期を繰り返している。1870年〜1900年は破壊(明治維新)、1900年〜1930年は繁栄(西洋社会へのキャッチアップ)、1930年〜1960年は破壊(戦時・戦後)、1960年〜1990年は繁栄(高度成長、ジャパンアズナンバーワン)、1990年〜2020年は破壊(失われた30年)。2020年からの30年からは新たな繁栄の30年になるのではないか。
・人口が減少する中、2020年からの30年を新たな繁栄の30年にしていくためには、これまでとは全く違ったモデルが必要。一つの鍵となるのが、労働市場の柔軟性。多様な人たちの力を活用するためには、多様な働き方を受容していくことが必要となろう。官から民、民から官への人材の行き来を活発にすることや、ベンチャー経験者を大企業に取り込む、定年退職を早める(例えば60歳から40歳に)などのアイディアが考えられる。
・ミレニアルズ世代(1982年〜2000年生まれ)がアメリカでは新たな創造をしていく中心世代に。ベビーブーマー(1946年〜1964年生まれ)の約7500万人を超える約8300万人の人口がいて、更に非白人比率は43%。この世代は、他者とつながっている、双方的関係(自ら発信する)、シェアリング、環境や健康、社会的意義への意識が高いといった特徴がある。
常識とは、「智(wisdom)」、「情(emotion)」、「意(will)」の三者が権衡を保ち平等に発達したもの。例えば、情があり過ぎると流されてしまうし、意がありすぎると頑固になってしまう。三者のバランスを保つことが重要。
・人は知らない間に、安全で楽な枠の内(コンフォート・ゾーン)にとどまってしまい、外からの視点が奪われる。意識して枠の外に出ていくことが重要。ダイバーシティ、CSR、社外取締役といった近年の動きは、全て枠を広げ、見えなかった視点を呼び込むこと。地域再生にも、よそ者、若者、バカ者というように、色々な視点を呼び込むことが鍵となる。
日本人の強みは、「カレーうどん」に象徴されるように、異分子を取り込む独創性、垣根を取り除いて活かす感性である。これは、元々日本人が一神教ではなく多神教であることに由来する。日本人の真面目さも世界からは高く評価される。


【得られた気づき】
(1)リーダーシップのあり方について
 ケネディスクールで学んだコンセプトは全て英語で学び、日本に戻ってからそのまま適用するのは難しいと感じていましたが、渋沢健さんが、日本で生まれ育った私たちにもすっと腹に落ちるような言葉で解説してくれたように感じました。一点目は、「智」、「情」、「意」という三者がバランスよく揃うことが完全な常識であるというコンセプト。ロジックだけではなく感情に働きかけることで人は初めて動くといったケネディスクールのマーシャル・ガンツ教授らの授業で学んだコンセプトと通じるものがありました。私自身、様々な知識を身につけるのと同時に、多種多様な人たちとの交流や、芸術・文学・映画などを楽しむことを通じて感情を豊かにしていくことや、定期的に自省をすることで、自分が本当にやりたいことについてぶれない意志を持ち続けることが大事だと気付くことができました。二点目は、コンフォート・ゾーンから出て、多様な視点を呼び込むことの重要性。これは、自分に見えない視点や見解を浮き上がらせることや、チームのメンバーがそうした発言がしやすいような安全な環境を作っていくことこそが、リーダーシップを発揮することだというという、適応型リーダーシップ(Adaptive leadership)で得られた学びと同じだと感じました。今後も、日々の仕事や生活の中で、自分自身の狭い枠の外に出ながら、多様な視点を呼び込むことを意識していきたいと思います。

(2)ミレニアルズ世代の可能性について

 自分も含まれるミレニアルズ世代は、小さい時からインターネットを通じて世界とつながっていて、外国人など自分とは異なる人たちへの受容性が高いと思います。また、気候変動問題などのグローバルな問題の解決に意識を向けている人も多いし、実際、大企業や世界的に有名なコンサルを辞めて社会起業家の道を選ぶ友人もゴロゴロいます。これは、ケネディスクールの2年間でも特に強く感じたことで、彼らは人種や出身国といった点で人を差別せず、オープンマインドで、地球環境問題や貧困問題などのグローバルな課題に強い問題意識を持っている人たちが多いです(ケネディスクールに特にそういうタイプの人たちが集まっていたことは否めないですが。)。こうした中、私自身も関心があるのは、必ずしも収益性が高くないものの、地球環境に貢献する事業や、社会的意義の高い事業に中長期的な成長資金が流れる仕組みをどう作っていくかということです。渋沢健さん曰く、100人のうち10人〜15人が発信し始めれば、自然に新しい考え方は広まっていくとのこと。地球環境問題や社会問題に元々関心の高い私たちミレニアルズ世代が中心となって、少しずつESG投資のような考え方を広めていくことができれば、投資に対する考え方や、ひいては資本主義のあり方も変わってくるように思いました。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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