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秋学期の授業の中間振り返り

秋学期の授業も半分が終わったので、各授業について率直に思うところを書いておきたいと思います。

1 貿易の政治経済学(ITF110:The Political Economy of Trade)
 今のところ、一番満足度の高い授業です。9月から10月上旬にかけては、リカードの比較優位のモデルなどの国際貿易の基礎的な理論を勉強しました。貿易の自由化は、国の経済に全体としてポジティブな影響をもたらす一方で、国内に勝者と敗者を作り出すため(例えば関税の撤廃により、輸出企業は利益を得るが、農家は損失を被る)、政治的に高いハードルがあることを学びました。10月からは、WTOの仕組み(GATTからの変遷、紛争解決の仕組み、アンチダンピング協定、輸出補助金など)を学び、今はWTOに関する様々なケーススタディをやっています。
 この授業を取るまでは、貿易は、関税(Tariff)や輸入量規制(Quota)といった限られたツールを用いる、応用性の少ない分野だと思っていましたが、実際は扱っている範囲はもっと広く、補助金の在り方などを含む国の産業政策や、知的財産、雇用などの様々な分野にも影響するし、保健、気候変動などのグローバルな課題にも大きく関わることが分かりました。また、先進国対途上国という単純な対立構造から、中国やインドなどの新興国の台頭が加わり、多国間の利害が絡み合っている点も面白いです。島国であり、貿易なしには国が成り立たない日本にとっては、非常に重要なトピックですし、奥が深く、追及していく価値のあるテーマだと思うようになりました。
 ロバート・ローレンス(Robert Lawrence)教授も、貿易に非常に熱い想いを持っているのが伝わるし、授業中の学生の巻き込みも上手で、毎回の授業が楽しみです。

2 アメリカの官民関係(BGP100:The Business-Government Relationship in the United States)
 今のところ、2番目に満足度の高い授業です。アメリカの政策決定の特徴を、ビジネスと政府の関係性から読み解いていく授業で、まさにアメリカでしか学べない内容だと感じています。アメリカの政策決定の特徴は、①政府のパワーが分散している(連邦政府、州、市のそれぞれが政策に関する強い権限を持っている)、②ビジネスが政策に多大な影響を与えている(ロビイング活動が活発)、③そのため、政策は多様な意見を反映した網羅的なものになる一方、全体として一貫性のないものになる、ということを学びました。例えば、教育政策については、文科省が一律にカリキュラムを定める日本と違い、アメリカでは、学区ごとにカリキュラムなどを決めているため、格差が非常に大きいという問題があります。また、法人税については、連邦政府が課すものと州政府が課すものとがあるため、州ごとにトータルの税率について違いがあります。例えば、石油で財政が潤っているテキサス州は州の法人税をゼロにしているため、産業が集積しています。
 この授業を取ってみて、日本の政策決定は、アメリカと比べると、より中央集権的で、ビジネスのロビイング活動もそれほど活発でないのが特徴だと感じました。こうした日本の政策決定には、デメリットもあると思いますが、全国一律に格差のない政策が打ち出せる(特に教育や社会保障)、声の大きい一部の企業に政策が影響されにくいといったメリットもあるのではないかと思うようになりました。
 周りの学生に聞くと、この授業はふわふわとした内容が多く、明確なテイクアウェイがないという学生もいますが(特にビジネス志向の強い学生)、僕にとっては学びが多いです。何より、ロジャー・ポーター(Roger Porter)教授自身が、レーガン・父ブッシュの両政権で大統領の経済政策のアドバイザーを務めていたので、アカデミックな観点もありつつ、非常に実践的な内容が学べていると感じています。

3 エネルギー政策:技術、システム、市場(IGA410:Energy Policy: Technologies, Systems, and Markets)
 上記2つの授業で比べると、少し満足度は低いです。国家のエネルギー・ミックスや、資源獲得戦略など大局的な政策について学べると期待していたのですが、ヘンリー・リー(Henry Lee)教授の専門性がどちらかというとインフラ・ファイナンスの分野にあるためか、よりミクロの観点からの話が多いです。また、インターナショナルな視点もやや少なく、どうしてもアメリカの視点からの授業内容になりがちだと感じています。プロブレムセット(Problem Set)という授業の理解度を測る小テストでも、エネルギー政策を国家の観点から考えるという問題よりは、発電プロジェクトのコストや投資判断について考えるような問題が多かったです。それでも、特に石油や天然ガス市場がどう動いているかや、核不拡散などの問題と絡めた原子力エネルギーの見通しといった内容もあり、日本では学ぶことのできない点だったので、概ね満足しています。

4 交渉の行動科学(MLD224A:Behavioral Science of Negotiations)
 この授業も面白いのですが、上記3つの授業と比べると、やや満足度は低いです。教授がビジネススクールの出身のためか、毎週行うエクササイズも、サマーインターンシップの給料の交渉や、サプライヤーとバイヤーの価格交渉といったビジネス的な内容のものが多く、より複雑な利害が絡んだ多国間の交渉を学びたいと思っていた僕にとっては、少し期待外れのところがありました。また、毎週のエクササイズも、仮想的な状況下でのロールプレイに過ぎないので、実際のビジネスや政府間交渉で活かせるかというと、よく分からないところがあります。
 こうしたソフトスキル系の授業は、授業中の貢献が中々難しいと感じています。というのも、テーマが交渉という身近なものであるがゆえに、事前にリーディングをしてきていなくても、自らの経験に照らして何となく発言ができてしまうため、英語表現の豊かなネイティブの学生が議論をリードしがちだからです。また、微妙な心情の変化や交渉の戦略を英語で話さなければいけないので、非ネイティブの僕にとっては、貢献が難しいことがあります。何とか秋学期の後半は巻き返して、授業でもっと貢献していきたいと思います。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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