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2014年秋学期の授業のまとめ

 2014年の秋学期に取った授業5つの概要と感想について、ケネディスクールの内部用に作成した文章ですが、参考になる人もいるかもしれませんので、以下に共有したいと思います。

BGP100: The Business-Government Relationship in the United States (Professor: Roger Porter)
 産業政策、マクロ経済政策、教育、医療保険制度、R&D、貿易政策などのテーマごとに、アメリカの産業界がどのように政府の政策形成に影響を与えているかを学ぶ授業。ロジャー・ポーター教授は、レーガン大統領とブッシュ父政権で経済政策アドバイザーを務めた人。大統領の補佐官として、どのような点を意識して助言を行っているか学びたいと思い、受講した。授業は、緩い雰囲気の中、教授のファシリテーションのもと、学生からの意見を引き出しながら進んでいく。たまにコールドコールあり。教授は親日家のため、日本人ということでよく当てられた。英語はゆっくりと話し、非常に聞き取りやすい。
 学生の中には賛否両論あったが、私としては、①初めての学期の授業で慣れない中、日本人ということで授業参加がしやすかった、②アメリカの政策形成の仕組みについて学ぶことができた、③ポーター教授から大統領の補佐官としての振舞い方や哲学を学べた、の3点の理由から、受講して良かったと思う。 他方、授業はポーター教授の漫談が中心になりがちのため、何か明確なテイクアウェイを求めている人には、この授業は向かないと思う。成績については、本人が授業中にも言っていたとおり、ケネディスクールの定める成績の割合の指標を遵守しているため、アメリカ人学生が多数を占める中で良い成績を取るのはそれなりに大変と思われる。

IGA410: Energy Policy: Technologies, Systems, and Markets (Professor: Henry Lee)
 石油・天然ガス市場、再生可能エネルギー、原子力、気候変動、電力市場など、エネルギー政策の概要について一通り学ぶ授業。授業の前半は講義が中心だが、後半になるにつれ、ケースに基づいたディスカッションなど、学生の積極的な参加が求められるようになる。学期の最後には、国ごとのケーススタディを行い、日本と中国、リベリアが取り上げられた。日本の回では、クラスの中の日本人学生が私一人であったため、福島原発後の日本のエネルギー政策の現状や、日本の抱える地理的制約等を積極的に共有するよう心掛けた。また、2014年秋まで米国エネルギー省次官を務めていたダニエル・ポネマン氏による授業もあり、実務家の観点を学ぶ上で、大変勉強になった。
 授業の内容は面白かったと思う反面、ヘンリー・リー教授は、議論のモデレートは必ずしも上手という印象は受けなかった。パワーポイントのスライドの中には、数年間リバイスされていないものなども見受けられた。また、学期中を通じて計3回出されるプロブレムセットが、授業で全く習っていない内容も含まれ、かつ複雑な計算を伴い相当な時間を取られるため、学生からは不満の声も多かった。
 とはいえ、エネルギー政策の基礎を一通り学んで、今後のケネディスクールでの発展的な授業の理解につなげるという意味では、取って良かったと思う。

ITF110: The Political Economy of Trade (Professor: Robert Lawrence)
 クリントン大統領の経済政策アドバイザーを務めたロバート・ローレンス教授による貿易政策の授業。前半は、国際貿易の経済学的な理論や、WTOの紛争解決などの仕組みを学び、後半になるにつれ、アメリカとEUの牛肉を巡る紛争や、アメリカの鉄のアンチダンピングなど、実際のケースに基づいたディスカッションが中心になった。計5回のケースについては、4人一組のグループで、事実関係などをパワポにまとめて事前に提出する必要あり。また、11月上旬には、各グループにアメリカやEU、日本、中国、ブラジル、インド、バングラデシュ、ケニアなどの国が割り当てられ、WTOドーハラウンドのシミュレーションが行われた。シミュレーション終了後、12月上旬までに、担当国の首脳を説明相手として想定したブリーフィングブックを作成した。成績は、グループ内のメンバーのピア・レビューが中心となる授業参加、ブリーフィングブック、中間試験、期末試験によって決まる。
 WTOシミュレーションで担当国(ケニア)の議長を務めたこともあり、今学期取った授業の中では最も多くの時間をかけた授業だったが、結果として、今学期で最も楽しく、学びの多い授業となった。教授は自由貿易の価値について信念を持っており、熱意を持って授業をしていた。オフィスアワーに行って日本の政策について質問をした際にも、非常に親身になって話をしてくださった。これまで貿易政策について実務経験や学んだことがない人で、基礎からしっかりと勉強したいという人にとっては、非常にお勧めの授業です。

MLD224A: Behavioral Science of Negotiations (Professor: Julia Minson)
 ペンシルベニア大のウォートン校で交渉を教えていたジュリア・ミンソン教授による、交渉学の授業。ミンソン教授は行動経済学や心理学の学問的バックグラウンドがあるため、BATNAなどの交渉学の基礎概念に加え、感情が交渉に与える影響、交渉に時間制限を設けることによる心理的影響、ジェンダーが交渉態度に与える影響などのテーマも扱った。ほぼ毎週、二人一組、またはグループによる模擬交渉が行われ、それに対する解説を翌日の授業で行った。また、毎週の交渉とは別に、学期を通じてグループプロジェクトも課された。これは、4人一組でグループを作り、実社会のファンドレイジングなどに、授業で学んだ交渉の概念を利用しようというもの。私のグループは、インドの教育系のNPOのためのファンドレイジングを行った。当初は、時間が多くとられる上、レストランなどに行って寄付をお願いしに行くなど、あまり楽しくないと感じていたが、最終的には、自分のコンフォートゾーンから抜け出る経験ができ、やってよかったと思えた。
 ミンソン教授は、オフィスのドアを開けっぱなしにして学生がいつでも入ってこられるようにする、ランチを企画するなど、学生と積極的に交流しようと努めていて、好感が持てた。他方、同じ学期に同じ内容の授業を2つ持っていて、常に学生に囲まれ忙しそうにしていたため、あまり気軽には質問しづらいとも感じた。また、MBAで教えていた経験が長いため、模擬交渉の内容がサマーインターンの給料の交渉や、不動産の売買など、かなりビジネス寄りだったので、政府間交渉などを学びたいと思う人にとっては、期待外れな面もあるかもしれない。
 今年度より、ブライアン・マンデルの授業はMPPが対象となったため、交渉学について学びたいMPA2やミッドキャリア、MPD/IDの学生は、ミンソン教授か、ケスリー・ホン教授の授業を取るという選択をすることになった。これらの授業のいずれかを受講したことが、1月期のマンデル教授の交渉術の授業を取る要件となっている。

MLD352M: The Leadership System: Leaders, Followers, Context (Professor: Barbara Kellerman)
 リーダーシップとフォロワーシップの関係、それらを取り巻く文脈(Context)の重要性について学ぶ半期の授業。ケラーマン教授は、ケネディスクールの多くのリーダーシップの授業や、そもそもアメリカのリーダーシップ産業というものに対し懐疑的である。ヒトラーやスターリンを例に挙げ、リーダーだけでなく、フォロワーの行動も組織のパフォーマンスに大きな責任を持っていることを学んだり、アラブの春や香港でのデモを例に挙げ、ソーシャルメディアの出現がフォロワーに影響力を与え始めていることを学んだ。ケラーマン教授は温かみのある人柄であるだけでなく、毎回熱意をもって授業をし、素晴らしい教授だと感じた。
 授業は20人前後の少人数であり、ケラーマン教授のファシリテーションも上手であるため、非常に発言しやすい環境だった。他方、アメリカの軍人やイスラエルの学生が多かったため、授業のディスカッションが中東問題に集中しがちであるとも感じた。成績評価は、クラスパーティシペーションと、計2回のレポートによる。レポートについて相談したいと言ってオフィスアワーに行ったところ、親身になって、構成などについてアドバイスをいただいた。リーディングの量は毎回50ページほどあり、全て読むのは大変だったが、必ずしも読んでなくても授業参加はできると感じた。いわゆるケネディスクールの王道のリーダーシップとは全く異なるアプローチをとる授業のため、この授業を取りたいと考えている方は、ケラーマン教授の著作やブログを事前に読んで、内容に共感できるかを確認しておくとよいと思う。
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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