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The Arts of Communicationsの授業が始まりました

 昨日から、The Arts of Communications(コミュニケーションの技法)という1月期の授業が始まりました。約1か月ぶりの授業だったことに加え、外は寒く雪が降っていて、足取りが非常に重かったのですが、行ってみると、非常に面白い授業が待ち受けていて、そうした気分も吹き飛びました。
 この授業は、効果的なコミュニケーションのあり方について、自分がこれまで全く持っていなかった視点を与えてくれそうです。ホリー・ウィークス(Holly Weeks)先生は、自分の感情を前面に出して情熱的に話をする先生で、彼女のアプローチは、アリストテレスの弁論術を参考にしています。(詳しい内容は、この授業の課題図書にもなっている"Thank You For Arguing"という本に書かれています。)初回の授業の概要は、以下のようなものでした。

● コミュニケーションの原則
効果的なコミュニケーションのうち最も重要な原則は、聞き手に焦点を当てること(Listener-focused)である。あなたが自分のプレゼンテーションに対して結果を求めているのだとすれば、それは必ずあなたの聞き手に関するものであるはずだ。だから、聞き手の関心や懸念を考えることから始めなさい
彼らが自分の利益だと考えていることを、変えるよう努めなさい(Work to change where they see their interest lies.)。あなたと聞き手が共有できる新しい共通の土台を見つけなさい(Find a new commonplace—one you and they share.)。そうすれば、あなたと聞き手の立場がかけ離れていると思える時であっても、聞き手を動かすことができるだろう。

● 人を説得するための3つのツール
人を説得するための最も強力な3つのツールは、ロゴス(Logos)、パトス(Pathos)、イートス(Ethos)である。ロゴスは「論理」による議論(argument by logic)、パトスは「感情」による議論(argument by emotion)、イートスは「人柄」による議論(argument by character)である。ロゴスは聞き手の頭(head)に、パトスは心(heart)に、イートスは腹(gut)に訴求する。
パトスは、その人の話し方や、ストーリー(story)に関するものである。聞き手の感情に共感することが最も重要である。我々の感情は自分たちの身近なものに関連していて、それを呼び起こすのがストーリーである。人々は論理的な議論のみで動かされることはほとんどなく、ストーリーを語ることが重要である。


 確かに、自分の経験を振り返ってみても、論理だけで人の心を動かすことは難しいと感じます。例えば、自分が今の組織で働くことを決めた時のことを振り返ると、僕は既に内定をもらっていた民間企業に就職しようとほぼ心を決めていたのですが、採用を担当してくれた人が自分の仕事に賭ける想いを熱く語ってくれたことや、その人の信頼できる人柄そのものが、「この組織で働こう」と自分の心が動いた決め手になったように思います。僕自身は、大学・大学院では工学を専攻していたこともあり、論理の部分を中心に鍛えてきたような気がします。また、就職活動の時には、コンサルティング会社の面接の練習のために読むような本、例えば「ロジカルプレゼンテーション」といった題名の本は、それなりに読んできました。ただ、ストーリーを活用して人の感情にどう働きかけるか、自分の人柄によってどう相手を動かすかという面は、ほとんど意識してこなかったように思います。この授業の中で、どうやってロゴス、パトス、イートスを総動員して、人を動かすことができるのか、色々と試行錯誤していきたいと思います。他方、僕は民衆の心を直接動かす必要のある政治家やアクティビストではなく、論理が重視されるがっちりとした組織で働いている人間なので、日常の業務の中で、どれだけパトスやイートスといったものが有効なのか、少し半信半疑な面もあります。機会があれば、ウィークス先生に、ロゴス、パトス、イートスという枠組みはどれだけ汎用的なのか、実際に日本の職場に戻った時に使えるものなのか、疑問をぶつけてみたいと思っています。

 もう一つ、僕にとって大きな発見だったのは、文法の間違いに関するアメリカ人の考え方についてです。あるクラスメイトの外国人学生が、授業中に行った自分のスピーチについて意見を求められた際に、「文法の間違いが気になって、自信を持って話せませんでした。」という趣旨の発言をしました。これに対し、ウィークス先生は以下のとおり答えました。

アメリカ人は話し手の文法の間違いを気にしません。もしあなたが文法を完璧にしようとするならば、それは時間の無駄です。我々は話の中身によって動かされます(We are content-driven.)。アメリカ人は、話し手が文法を正しくするためにためらっているのを見るのを好みません。また、聞き手は話の偉大な編集者(Listeners are great editors)ですので、多少のミスは気にせず、堂々と話してください。


 このウィークス先生の回答は、僕にとっては目から鱗でした。僕自身、昨年の8月に渡米して以来、ここではaを使うべきかtheを使うべきか、単数形なのか複数形なのか、inを使うべきかforを使うべきか、といった細かな文法や用法を気にして、自分の発言に自信が持てなかったり、そもそも発言をできなかったりすることがありました。アメリカ人は話の中身を最も重視しているということ、また、多少のミスはアメリカ人が自分の頭の中で勝手に編集してくれるということは、僕にとっては大きな発見でした。これからは、細かい文法ではなく、もっと発言する中身に集中して、自信を持って発言していきたいと思います。


Thank You for Arguing: What Aristotle, Lincoln, and Homer Simpson Can Teach Us About the Art of PersuasionThank You for Arguing: What Aristotle, Lincoln, and Homer Simpson Can Teach Us About the Art of Persuasion
(2007/02/27)
Jay Heinrichs

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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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