ケネディスクールのエミレーツ・リーダーシップ・イニシアティブというプログラムの一環で、
アラブ首長国連邦(UAE)に一週間、研修旅行に行ってきました!昨年の秋に、ケネディスクール全体から公募がかけられ、約80人から21人が選ばれました。この21人に、エミレーツ・リーダーシップ・イニシアティブのフェロー6名を加え、合計27人で行ってきました。学生の出身国は17か国でした。(日本人は僕一人。他はレバノン、ヨルダン、スーダン、ドイツ、英国、ロシア、インド、中国、カザフスタンなど。)
UAEでは、企業や政府機関の展示会である「世界将来エネルギーサミット(World Future Energy Summit)」に参加した他、持続可能な都市の形成を目指すマスダー市や、アブダビ環境庁、首相府などを訪問し、
エネルギー・環境問題に関し、政府のハイレベルの人たちや、ビジネス界の人たちと意見交換を行いました。学んだことはたくさんあるのですが、4点に絞ると、以下のとおりです。
まずは、
エネルギー政策について。原油と天然ガスが豊富に取れる国でありながら、それのみに依存せず、2020年までに原子力をベースロード電源の25%、再生可能エネルギー(主に太陽光)を7%に引き上げようとしています。原子力発電所については、7基の建設が見込まれていて、韓国のKEPCOが入札しました。なぜ日本やフランスではなく、韓国が勝ったのかを、原子力協力公社(Emirates Nuclear Energy Corporation)の担当に質問したところ、①韓国はワンストップサービスを提供してくれる、②知識の移転(Knowledge Transfer)についても柔軟だった、③安かった、との回答がありました。
中東の国でありながら、将来を見据え、積極的にエネルギー源を多角化し、気候変動問題にも対処しようとしている点に、感銘を受けました。
二点目は、
水について。UAEでは、人口・経済の伸びに比べ、水資源が不足しており、問題となっています。地下水の多くは、農業に使われてしまっています。そのため、地下水の適切な管理に加え、海水の淡水化を積極的に行うことで、水資源を確保するよう努めています。アブダビ環境庁が、水の需給管理を中心的に担っているようです。日本では当たり前のように水道水を使い、飲むこともできますが、
UAEをはじめとする中東諸国ではこれから水不足にどう対処していくかが大きな問題となってくると感じました。また、衛生的な水を提供している日本の自治体や企業の海外展開の可能性が大きいということを肌で感じることができました。
三点目は、
多様性について。UAEは1971年に建国されたばかりで、歴史の浅い国です。積極的に海外から優秀な人材を受け入れていて、アブダビやドバイの街を歩いていても、イスラムの服装を着た人から、欧米系の白人人種、アジア、アフリカ系まで、実に多様な人種が混在していました。また、人種のみならず、女性の活用が非常に進んでいることにも驚きました。今回の旅で、ドバイにある首相府(Prime Minister's Office)を訪れましたが、その主要スタッフのほとんどが女性でした。イスラムの国でありながら、
国家戦略として、積極的に優秀な女性を登用しようとしている姿勢に感動しました。日本も学ぶべき点が多いように思いました。
四点目に、
成長性について。2020年に持続可能性(Sustainability)をテーマにして、ドバイで万博が開かれます。これに関連し、マスダー市という、先進的な自動運転交通や、メガソーラー、エネルギー関連の企業や研究施設を集積させた、持続可能な都市の計画も、アブダビで進行中です。また、2021年はUAE建国40周年記念ということで、「ビジョン2021」という国家ビジョンを打ち出し、その実行に向けて政府一丸となって取り組んでいます。そのため、2020~2021年に向けて、高層ビルやホテル、レジャー施設等の新規の建設計画がたくさん見込まれており、街中を見渡しても、工事中のビルや道路が多く見られました。
UAEはまだまだ成長するという熱を肌で感じることができました。
UAEの成長性や先進性にも驚いたのと同時に、
一緒に行った学生たちのバックグラウンドや志にも驚きました。ほんの一部の例を挙げれば、貧しい家庭で育ち、働きながら夜間の高校と大学を出て、企業で働きながら母国の子供たちの教育のための基金を立ち上げたというジンバブエのミッドキャリアの学生、ベインアンドカンパニーと、NPOを主な顧客とするブリッジスパン(Bridgespan)でのコンサルタントを経て、そうした業界にまたがる知見を活かして気候変動問題の解決に貢献したいというオーストラリアのミッドキャリアの学生、食糧とエネルギーの結節点に関心を持ち、将来はマクドナルドなどの食に関する企業でCSRを推進したいというアメリカ人学生、などです。
彼らが本気で母国や、世界を良くしようと活動したら、きっと世界はより良い場所になっていくんじゃないかと思わせてくれるようなメンバーでした。
今回の旅では、一週間ずっとバスの中やランチ、ディナーも含め、共通の時間を過ごしたので、彼らの経験を色々と聞くことができました。ただ、秋学期を振り返ってみると、日々のリーディングや課題に追われ、こうした同級生から学ぶ機会というのを疎かにしてしまったなぁと反省しています。
明日から始まる春学期では、素晴らしい同級生から学ぶ機会に意識的に多く参加していきたいと思います。
(おまけ):I20と呼ばれる、アメリカの大学で勉強していることの証明書があるのですが、それを今回の旅に持っていくのを忘れてしまいました。パスポート、VISAに加え、
I20を手持ちの荷物の中に入れておかないと、アメリカへの入国ができなくなるので、これからアメリカに留学に来る人は、お気をつけください。(正確には、仮に忘れても、30日間の一時的な滞在が認められ、その期間中に手続きをすることで、問題なくアメリカにいられるようですが、かなり手間がかかります。)恥ずかしながら、僕は、旅行にI20を持参しなきゃいけないという意識がすっぽり抜けていました。今回は、ハーバードのインターナショナル・オフィスから、I20のコピーをPDFファイルで送ってもらうことで、何とか対応しました。

若きUAEのエネルギー大臣と意見交換。

世界エネルギーサミットでの授賞式。パナソニックが大企業部門で受賞。

ジャパンパビリオン。展示場の中で一番目立っていました。

ハーバードパネル。エネルギー問題における政府の役割について議論。

アブダビ内の、シーク・ゼイド・グランド・モスク(Sheikh Zayed Grand Mosque)。

アブダビ内のホテルで、カヤッキング。
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