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日本人であることを最大限生かすには

 アメリカに来たのが昨年8月の上旬なので、ちょうど半年が経ちました。留学して半年経つと英語が突然すべてが聞けるようになるといった都市伝説もありますが、そんなことはありません。ただ、以前よりは、会話をしている中で、「次はこういうことを言ってくるだろうな。」という認識のパターンが増えて、自分の中に蓄積されてきたと感じます。例えば、留学当初は、カフェなどでコーヒーを買うだけでも、店員の言っていることが聞き取れないことが多かったのですが、今では、「次は、店内か持ち帰りか(For here or to go?)を聞いてくるんだろうな」といった先読みができるようになりました。このように、英語のリスニング力やスピーキング力が大きく伸びたというよりは、日々の生活における英語のやり取りのパターンの蓄積が増えてきたことで、以前より英語の会話に自信が持てるようになってきたと感じます。

 英語に自信がついてきた一方で、自分が日本人であるというアイデンティティからは決して逃れられないという事実を、ますます強く突きつけられています。留学当初は、アメリカ人に可能な限り同化して、同じような調子で冗談も言い、行動も似せて、醸し出す雰囲気も合わせていくことが必要だと思っていました。そのようにアメリカ人に限りなく雰囲気を似せていくことが、国際人になるための近道だと思っていました。最近では、当たり前ですが、それはどんなに頑張っても無理なんだと思うようになりました。細かいところで言えば、そもそもアメリカ人の関心の強いNFLなどのアメフトの選手もほとんど知らないですし、アメリカのテレビを見て育っていないので知っている芸能人や歌手の数も圧倒的に少ないです。アメリカ人と接すれば接するほど、そうしたアメリカで生まれ育ったことにより知らぬ間に身につける知識や情報の面で、絶対に埋めがたい溝があることを感じています。
 
 では、こうした絶対に埋めがたい溝がある中で、どのようにすれば国際社会において日本人であることを最大限生かすことができるのでしょうか。最近はこんなことばかり考えていて、色々と考えた結果、以下の2点に行き着きました。それは、①アメリカ人があまり知らない、日本の政治経済事情や物の考え方を紹介する②日本語と英語の両方で考えることで、物事の重層的な理解につなげる、ということです。

 まず、アメリカ人にとって新鮮でユニークな情報や視点を提供することです。ケネディスクールでは、相変わらず積極的な学生に囲まれ授業参加に苦労することが多いのですが、最近気づいたのは、日本で生まれ育ったというバックグボーンを最大限生かして、それに基づいて発言することで、ユニークで意味のある意見を言えるということです。例えば、今学期はジェーン・マンスブリッジ教授の「民主主義の理論」という授業を取っています。アリストテレスの政治学の中に、「中流が多いことは、社会に安定をもたらす」といった趣旨の文章がありました。僕は、この言葉を聞いたとき、ぱっと1970年代の高度経済成長期の日本に関する「1億総中流」という言葉を思い出しました。そこで、当時の日本の経済状況や「1億総中流」の話を紹介しながら、中流が多いことで社会に安定をもたらすという概念は、自分の生まれ育った国の例と感覚的に合致するという話をして、授業の議論に貢献することができました。これはあくまで一つの例ですが、日本で生まれ育ったからこそ知っている知識や、物の考え方を紹介することで、議論に貢献できるということを身を持って感じるようになりました。

 もう一つは、日本語と英語の両方で考えることで、複雑な概念や事象についての理解を深めるということです。再び、ジェーン・マンスブリッジ教授の「民主主義の理論」の話になりますが、原著でアリストテレスの政治学を読む必要がありました。英語が第一言語でもない上に、極めて難解な本のため、初めて読んだときは、内容が頭の中にさっぱり入ってきませんでした。そこで、Kindleで、日本にいては決して読まなかったであろう政治学の本(佐々木毅元東大総長の本など)を買って、日本語でアリストテレスの考え方を大まかに頭に入れてから、再び原著を読んでみました。すると、理解度が全く変わり、頭のなかにすっと内容がしみこんでくるようになりました。この経験をするまでは、第二言語として英語を話している自分の環境を不遇に思うことが多かったのですが、むしろ、これまでの人生において日本語を使って深い思考をしてきた経験を最大限生かせばいいと思うようになりました。幸い、アメリカで高い影響力を持っている本の多くは、日本語の翻訳版が発行されていることが多いです。今後は、複雑な内容の本は、日本語と英語の両方で読むことで、理解を深めていこうと思います。

HKS Library Newspaper
ケネディスクールの図書館には日経新聞と朝日新聞が置いてあります。最近はこれを毎日読むように意識しています。
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  • 2015-04-02 04:54
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プロフィール

tak

Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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