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クジラの島の少女(Whale Rider)から学ぶリーダーシップ

 リーダーシップの行使(Exercising Leadership)の授業は、週に二回の大教室の授業に加え、週に一回の8人の小グループのディスカッションや、映画鑑賞が課されています。小グループのディスカッションや映画鑑賞では、毎回、自分自身の内省を深く迫られる3枚程度のアンケートに回答する必要があります。映画鑑賞の例で言えば、誰がリーダーシップを発揮していたか、自分だったらどのように介入して状況を変えるか、自分の過去の経験の中に映画と同じような経験はあるかといったことを回答する必要があります。これを毎回TAが採点してくれます。僕のグループのTAはMITの政治学の博士課程の女性で、毎回きちんとコメント付きで返却してくれるので、TAとのやり取りを通じ、自分自身の内面について深く見つめることができると感じています。このように、この授業のリーダーシップのアプローチは、かなりの部分、精神医学や心理学といったものを基礎としていると感じています。

 先週は、「クジラの島の少女(Whale Rider)」という映画を見ました。

<あらすじ>
 舞台は、ニュージーランドのマオリ族の村。主人公は13歳の少女パイキア伝統的に男がリーダーとして村を率いていたため、パイキアが生まれたとき、その祖父であり村のリーダーであるコロは大いに失望した。コロの息子は、ドイツで画家になると言って村を出て行ってしまっため、パイキアは祖父母に育てられた。コロは、初めはパイキアに対して複雑な思いを持っていたが、徐々に祖父と孫として絆を築いていく伝統分の後継者は男であるべきという考えに強く拘っていたコロは、新しいリーダーを発掘するため、男子のみの訓練学校を設立する。パイキアがこの学校に入ろうとしたり、村に伝わる武術を習得しようとすると、コロは怒りをあらわにした。ある日、コロは、リーダーに代々伝わるクジラの歯の飾りを海に投げ捨て、それを拾った人をリーダーにしようと考えたが、自分が訓練した男子たちの誰もそれを見つけることができず、コロは失意の底に落とされる。そんな中、村の浜辺に大量のクジラが漂流し、それを海に返せないという問題が発生していた。パイキアはクジラにまたがり、先頭をきってクジラを海に引き返させ、他の大量のクジラも、パイキアに導かれるように海に帰っていった。これをきっかけに、パイキアは村の新しいリーダーとして認められることになった。

Whale Rider
主人公パイキア

 この映画から、僕がリーダーシップについて学んだのは、以下の2点です。1点目は、権威(Authority)のない人でも、勇気や強さ、知性といった資質を証明することで、リーダーになることができるということです。この映画では、権威のないパイキアがどのようにリーダーとして周囲に認められるようになったかが大きなテーマになっています。パイキアは、村の伝統であるタイアハと呼ばれる武術を習得し、祖父であるコロとの絆についての感動的なスピーチを行い、コロが大切にする伝統的なクジラの歯の飾りを海底から拾い出すことで、勇気や強さ、知性といったリーダーに必要な資質を証明していきます。最後には、「私は死ぬのが怖くない(not scared to die)」という言葉とともに、クジラに乗り、大量のクジラを海に帰すことで、村を救いました。この死をも恐れないパイキアの勇気ある行動をきっかけに、頑なだったコロもパイキアをリーダーとして認めざるを得ませんでした。このように、死をも恐れない勇気ある行動を取ったり、強さや知性といった資質を示すことで、権威のない人もリーダーになれるということを学びました。

 2点目は、権威を持つ人は、しばしば所属するコミュニティの伝統や価値観に縛られ、現実を直視しないことがあるということです。映画では、村の長であるコロが、村の古い伝統に縛られ、孫であるパイキアの資質に薄々気づきながらも、彼女をリーダーとして決して認めようとしませんでした。コロからすれば、少女であるパイキアをリーダーとして認めることは、男を代々リーダーにしてきた村の伝統を疎かにし、祖先を裏切ることになると感じていたのだと思います。このように、コミュニティで最も権威のある人が、厳しい現実を直視しようとしないということが大きな問題になることがあります。自分自身の過去の経験を振り返ってみても、最初に配属された部署で、組織の長が伝統的な価値観(若い人こそ誰よりも長い時間身を粉にして働くべき)に縛られていたために、僕自身肉体的・精神的に厳しい思いをしましたが、結局そのような状況を変えられなかったという経験があります。

 では、このように、権威ある人が現実を直視せず頑に立場を変えないという状況におかれたとき、権威のない人は、どのような方策を取り得るのでしょうか。僕が授業のアンケートの中でした提案は、他の権威を持つ人たちとのパートナリング(Partnering)や仲間作り(Finding Allies)をするということです。パイキアは、彼女がリーダーとして適性があることを、家族である祖母や叔父には認めさせることができていました。ただ、残念ながら、祖母や叔父には、コロの意思決定を変えるだけの権威がありませんでした。もし、パイキアが、コロの側近であり権威を持つ人に、自分のリーダーとしての資質を認めさせることができていれば、もっと早くリーダーとして認められたかもしれません。僕自身の例でいえば、組織の長から信頼され、彼をも説得できる権威のある人に、自分の意見について納得してもらうことができていれば、状況を変えられたかもしれません。このように、たとえ自分自身が権威を持っていなくても、権威を持つ人に影響を与え得る他の権威のある人と、戦略的にパートナリングや仲間作りをすることで、変化を起こせるのではないかと感じました。
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tak

Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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