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エネルギーについて思ったこと

 最近は、ついに本番まで10日ほどに迫ったジャパントレックの準備、相変わらず難しい授業の予習・復習、そして、来週発表をすることになったボーゲル塾の国際政治分科会の準備、MPAの仲の良いクラスメイトの誕生日パーティなどで、忙しくも充実した日々を送っていました。

 今日は、エネルギーについて思うところを書きたいと思います。メガン・オサリバン先生の「エネルギーの地政学」の授業では、民主主義と石油(Democracy and Oil)の間に関連性はあるかというテーマで、議論が行われました。Take a Positionペーパーと言われる課題を提出することが求められ、僕は、あえて通常とは逆の見方である「民主主義と石油の間の関連性はあまりない」という立場を取ってみました。「民主主義と石油の間に関連性はある」と主張する学者たちは、石油収入に依存するサウジアラビアやUAE、ベネズエラといった国々では、民主主義ではなく、王政や独裁制などの政体を採用しているケースが多いことを、統計データなどを用いて示しています。この理由として、(1)石油収入の大きい国家では税金をあまり徴収する必要がないため、国民は政府に対してあまり説明責任を求めなくなる、(2)膨大な石油収入を警察や軍隊などの強化にあてることで、国民の民主主義を求める運動を押さえつけることができる、といった点が挙げられています。たしかに、これは一理あると思ったのですが、僕は、インドネシアの例を用いて、論を展開しました。具体的には、1998年にインドネシアが、教育を受けた中間層の学生たちの運動がきっかけで、独裁体制から民主主義に移行した例を挙げました。その時代、インドネシアはまだ石油の輸出国で、国家収入の一定程度を石油に依存していたにも関わらず、民主主義に移行することができました。他にも、チュニジアがアラブの春を通じて民主主義に移行したことや、石油に依存していたマレーシアが経済の多角化を図ることができたことなども、例として挙げました。つまり、国家収入を石油に依存していたとしても、民主主義に移行すべきという国民の強い意思や運動があれば、民主主義は実現できるのではないかという論を展開しました。

 クラスの意見は大まかに半々に分かれました。特に、サウジアラビアやベネズエラから来た学生は、石油と民主主義に関連性は間違いなくあるという主張を展開していました。オサリバン教授の意見は、統計的に見れば、石油と民主主義に一定の関連性は認められる、しかし、それは予測可能な(predictable)ものではないというものでした。すなわち、「石油への依存度が下がったから、その国は民主主義に移行するだろう」という予測を事前に立てることは不可能だということです。

 他にも、別の学者の論文が授業で紹介されました。それは、「石油の価格が下がると、国家の民主化はより進む」というものでした。何をもって「国家の民主化が進んだ」と言えるかによって、統計の結果は変わってくると思うのですが、その学者の論文によれば、少なくとも両者の間にある程度の相関関係が見られました。これが正しいとすると、現在、石油価格は昨年上半期と比べ急激に低下していますが、これが石油に依存する中東諸国の民主化を推進するかもしれないという仮説が立てられます。中東諸国の民主化はアメリカの高い関心事でもあるので、こうした議論がアメリカでは盛んに行われています。

 このように、授業では石油と民主主義の関係性について学んでいたのですが、来週のボーゲル塾の国際政治分科会で、「原子力の平和的利用と核不拡散について」という内容で、MITのスローンの方と、ハーバードの病院に研究に来ていらっしゃる医者の方と一緒に発表をすることになりました。僕はその中でも、「原子力エネルギーと核不拡散」というテーマで、特に発表する予定です。日本では核不拡散について議論がたくさんされている印象はありませんが、ケネディスクールではこの核不拡散の問題だけで秋学期に一つの授業があったり、ほぼ毎週専門家を招いてのセミナーがあったり、アメリカでは高く注目されているテーマだと感じています。発表資料の作成にあたって、色々なWEB上の資料を読む中で、IAEAの役割や核不拡散条約(NPT)の内容といった国際政治の知識に加え、原子力発電所の仕組みや核燃料サイクルの仕組み(ウランの濃縮やMOX燃料など)といった技術的・工学的な知識がなければ、この問題をきちんと理解できないと強く感じました。
 
 長くなってしまいましたが、何が言いたかったというと、最近の授業やボーゲル塾の発表を通じて、エネルギー問題は、国際政治や経済学、工学的知識・技術などの統合的な理解がなければ真に理解することができないとますます感じるようになりました。僕はそれらを統合的に理解できている状態には全くなく、今後のケネディスクールでの学習や、キャリアを通じて、理解を深めていきたいと思っています。他方、努力を続けていけば、日本の大学・大学院で工学を学び、ケネディスクールで政治を学んでいる自分のバックグラウンドを生かすことができる分野なのではないかとも感じています。引き続き、このエネルギーという奥の深い分野を追求していきたいと思っています。
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[C47] 日本のエネルギー政策

日本でも丁度、エネルギーミックス策定に向けた議論が政府内で始まっていますが、望ましい電源構成のあり方など、ご示唆があればお聞かせ願えれば幸いです!
  • 2015-03-05 00:03
  • auau
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[C48] Re: 日本のエネルギー政策

コメントありがとう!今時点で確信的な意見は持てていないのですが、こっちで勉強していて一番感じるのは、原子力について、建設費用やランニングコスト、CO2排出量だけでなくて、核拡散やテロのリスク、将来にわたっての廃棄物の処理のコストなども含めて、より広い観点から議論されているなぁということです。賛成派と反対派もはっきり分かれます。僕自身、廃棄物処理・安全性などのコストも含めて、本当に原子力が必要かどうか、もっと考えたいなと思っています。あとは、シェール革命。アメリカが2020年までに石油の輸出国になると言われていますが、天然ガス・石油ともに、政治的にも安定しているアメリカとのエネルギー協力がますます重要になるじゃないかなと思っています。
  • 2015-03-12 14:13
  • tak
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[C49]

ありがとうございます!
なるほど、勉強になります。
実は人事異動で4月からこの分野担当することになったので、
また色々ご指導いただければ幸いです(^^)
  • 2015-03-13 08:51
  • auau
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プロフィール

tak

Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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