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CCSは国際政治をどう変えるのか&グループワークの難しさ

 今週水曜日に、エネルギーの地政学(Geopolitics of Energy)のグループプロジェクトのプレゼンがありました。僕のグループは、発電所などから排出される二酸化炭素を回収して地中に埋めるCarbon Capture and Storage(CCS)が国際政治に与える影響についての発表をしました。チームは6人で、MPAの友人4人(韓国系アメリカ、カメルーン、チリ、僕)と、ミッドキャリアの友人(カザフスタン)、MPPの友人(ドイツ)で組みました。寄せ集めのチームだったので、いまいちチームとしての一体感が生まれませんでした。これだけ国籍や年齢が多様なメンバーが集まっていると、中々意見をまとめるのが難しいです。特に、地政学という学問分野は、数学や物理のように答えが一つはっきり出るようなものではなく、仮定の置き方や、将来のシナリオによっても全く結論が異なってくるものなので、提言をまとめる作業は難航しました。途中、あるメンバー(A)が、Aにとって相当質が低いと思われる文章をアップした別のメンバー(B)に対し、メールで怒りをぶつける事件も起きてしまいました。Aも大人げない対応だったと思うのですが、確かに、僕から見てもきちんとリサーチしていないだろうと思われる文章をBがアップしたので、Bにもある程度責任はあるように思います。グループプロジェクトの成果は成績の25%を占めるので、Aにとっては、仕事をきちんとしないBのせいで自分の成績が下がることに腹が立ったのだと思います。主にこれまでの職歴を評価されて入学してくる平均年齢の高いミッドキャリアと、職歴は浅いものの大学時代の優れた学業や将来のポテンシャルを評価されて入学してくるMPP、その二つの中間とも言えるMPAとの間では、価値観も異なりますし、授業へのコミットメントの度合いも違います。あえて単純化して言えば、ミッドキャリアは既に各国でそれなりの職務についている人が多いので、あまり成績を気にせず、グループワークの真剣度もやや低い傾向があり、MPPは、将来の自分の就職活動にもつながるので、高い成績を取りたいと思っている人が多いように思います。(もちろん、そうでないケースもかなりありますが、あえて単純化しました。)

 プレゼン自体は、まあまあの出来だったかと思います。僕自身は、CCSの代表的な3つのケーススタディを紹介しました。(世界初の大規模CCSプロジェクトであるノルウェーのスライプナー(Sleipner)プロジェクト、石油企業シェルの最初のCCSプロジェクトであるカナダのクエスト(Quest)プロジェクト、日本の苫小牧のCCS実証プロジェクト。)プレゼンの要旨としては、CCSはCO2の漏れや水質汚濁、地震を誘発するおそれがあるといった環境面での課題や、現状では政府の補助金や炭素税などのインセンティブなしには採算が取れないという経済面での問題、未知の技術であるため地元住民の理解を得られにくいという政治的な問題があるものの、前述した3つのケーススタディのような成功例が出てくるにつれそうした問題も解消されていくだろう、地政学への影響としては、火力発電からのCO2排出をゼロにすることができるため、石油や天然ガスと比べてコストの安い石炭の重要性が増してくる、それに伴い、主要な石炭の産出国であるオーストラリアや南アフリカ、中国、インドといった国々の国際政治上のパワーが高まってくる石油と天然ガスの産出により経済を支えている中東諸国はややパワーを低下させる再生可能エネルギーへの投資のインセンティブが損なわれる長期的には地中のCO2に関する新たな国際枠組や規制を作っていく必要性がある(その場合、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)がリードを取るべき)、といった内容です。

 個人的には、今回のレポートを書く過程で、日本はCCSの技術面や、実証プロジェクトの実績といった観点からはノルウェーやアメリカと比べやや遅れているとの印象を受けました。ただ、日本は地震国であるということを逆手にとって、CCSに伴う地震に関するリスクや懸念を解消する点において、国際的な役割を果たしていくべきではないかと思いました。今後CCSの需要が見込まれる国の中には、中国やインドネシア、インドなどの地震国も多いので、日本のCCSに関する地震のデータの蓄積やモニタリング技術などは、きっと役立つのではないかと思っています。

 この日のゲスト講師として、大気中からCO2を捕獲して地中に埋めたり、成層圏にエアロゾルという化学物質を撒いて地表に降り注ぐ太陽光の量を減らすことで気候変動を緩和しようとするジオエンジニアリング(Geoengineering)の第一人者であるデイビッド・キース(David Keith)教授が、講評をしてくれました。ケネディスクールで僕がこれまで出会ってきた先生は、どんなプレゼンをしても「Good presentation」などと言って褒める外交的な先生が多かったのですが、このキース先生は、学生に媚びることなく、違うと思ったことはズバリと間違っていると言ってくれたので、中々気持ちの良い先生でした。例えば、僕がプレゼンをした部分では、カナダのクエストでは地元住民がCO2漏出などの環境面のリスクを懸念してプロジェクトに反対したという説明をしたのですが、キース教授は、「それは事実と違う。クエストの実施されるアルバータ(Alberta)州では、石油産業が経済を支えており、そうした環境面での懸念はほとんどない。むしろ、そもそも気候変動は起こっているのか、気候変動対策をする必要があるのかという点に対する懐疑があり、CCSを活用して事業コストを高めてまでCO2を地中に埋める必要がそもそもあるのかという点を納得してもらうのが一番の課題だった。」という指摘がありました。

 ちなみに、キース教授が研究しているジオエンジニアリングはアメリカ国内でもかなり賛否が分かれる技術です。特に、エアロゾルを成層圏に撒くことが地球環境にどういった影響を与えるかが長期的に不透明であるため、反対している人が多いです。そのため、実現可能性という意味では、政治的にまだハードルが高いと思います。ただ、キース教授は、少なくともジオエンジニアリングも、再生可能エネルギーの推進などと同等に、緩和策を比較検討する上で議論の俎上に載せていくべきとの主張をしています。ケネディスクールでは、ジオエンジニアリングの技術や政策に関する授業をキース教授が持っているので、取れたら取りたいと思っています。


David Keithが2007年にTED TALKSに出たときの動画です
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Author:tak
2014年8月より、ハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School, HKS)に2年間留学しています。

HKSでは、エネルギー・環境政策や経済政策、交渉術、リーダーシップなどを学ぶ予定です。このブログでは、HKSでは何をどう教えているか、世界の政治経済分野のリーダーの考え方・習慣、英語学習の秘訣、その他日々の学び・感動を書き記したいと思います。

なお、このブログに書かれたことはすべて個人的見解によるものです。

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